■第6回「続編がはらむ問題」
るいちゃん「先生、何見てるんですか?」
先生 「ああ、これかい?見ててごらん。」
るいちゃん「あ、3匹の子ぶたですね。」
よしひろ君「オオカミなんかーこわくないー♪」
先生 「そうかな?」
よしひろ君「あ、あれ?」
るいちゃん「オオカミがおばあちゃんに化けてる・・・」
先生 「そう、これは「3匹の子ぶた」の続編ともいえる、「赤ずきんちゃん」なんだ。」
よしひろ君「へー、そんな作品、作ってたんですね。」
るいちゃん「有名だったんですか?」
先生 「それが、やっぱり大ヒットとはいかなかったんだ。」
るいちゃん「二匹目のドジョウはいなかったわけですね。」
先生 「まさにその通り。今回の講義はそのへんのことを考えてみようか。」
よしひろ君「ところで、なんで「赤ずきんちゃん」なんて作品がディズニーで作られたんですか?」
先生 「イソップやグリムなどの童話が短篇として発表されること自体はめずらしいことではないんだけど、問題はなぜ「赤ずきんちゃん」に3匹の子ぶたが登場してしまうのか、ということだね。」
るいちゃん「確かに、オオカミがでてくるのはいいとして・・・」
よしひろ君「なぜ、ぶたが?」
先生 「そう、これはまさに子ぶたがもたらした難題だったんだ、ウォルトにとってのね。この頃のウォルト達には映画を配給する力がなかったので、ある意味、配給会社に受けのいい作品を作る必要があったんだ。」
るいちゃん「子ぶたが受けがよかったんですか?」
先生 「折しも、「3匹の子ぶた」の大ヒット直後だったからね。でも、ウォルトは分かっていたみたいだね。当時、「またブタのを頼む。」といわれても、あまり乗り気じゃなかったと記録には残っているからね。結局、この作品は第1作目に及ばなかったんだけど、ウォルトは「ブタ以上のものをブタでやろうったって、そりゃ無理さ」と話していたそうだ。「白雪姫」が長編映画として発表されたときも、世間は7人のこびとの登場する次回作を期待していたんだけど、それを立派に裏切ったんだ。その頃には配給まで彼らがコントロールできていたからね。」
よしひろ君「でも、最近は続編続きですよね?ディズニーは。」
先生 「そうなんだ。先生もこれにはいささか閉口してしまうよ。続編が本編を超えるなんて、100本に1本あるかないし、超えてしまったらそれは本編が大した作品ではなかっただけ。ウォルトが聞いたら、どう思うんだろうね・・・。」
(Written by postmaster, May 5th,1999)
参考文献
- 講談社「ウォルト・ディズニー」ボブ・トマス著
- HYPERION「Disney A to Z」デイブ・スミス監修
脚注)
注1 3匹の子ぶた
3匹の子ぶたは言わずとしれた、ディズニーの出世作。ファイファー、フィドラー、プラクティカルの歌う「オオカミなんか怖くない」は当時大ヒットした。1933年5月27日公開。
注2 赤ずきんちゃん
原題は「The Big Bad Wolf」。1934年4月14日公開。1922年に公開された、同内容のシリー・シンフォニー・シリーズ「赤ずきん」もあるが、ここで取り上げたのは3匹の子ぶたが登場するもの。ビデオ「ミッキーとドナルドの仲間たち」に収録されている。ちなみに、この後「3匹のオオカミ(原題Three Little Wolves)」という続々編も制作されているが、やはりヒットはしなかった。
注3 イソップやグリムの童話・・・
シリー・シンフォニー・シリーズでは、数多くの童話が題材として取り上げられている。たとえば、アリとキリギリスも短編として制作されているし、リトル・マーメイドを筆頭に長編映画のほとんども童話をベースとして作られている。ただし文中でも触れているが、赤ずきん限ってはキャラクターを流用している点で異質であることは注目すべき点である。
注4 最近は続編続き・・・
ビデオオンリーではあるが、近年のディズニーは続編ラッシュである(美女と野獣、、アラジン、ライオン・キング、ポカホンタス・・・)。確かに過去の名作はほとんどリリースしてしまった、ということもあるのだとは思うが、原作の雰囲気を壊すだけの続編はもう見たくない、というのが個人的な感想。続編が今後予定されているものとしては、トイ・ストーリー(ただしこれは劇場公開予定)、リトル・マーメイド、ヘラクレス、ノートルダムの鐘、わんわん物語などがある。閉口。
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