今回の取材旅行で最も期待以上だった瞬間でした。

LINK: Drawn to Life | By Cirque du Soleil® & Disney | Orlando, Florida | Cirque du Soleil
この記事は「ディズニー・ディスティネーション・インターナショナル」の取材協力にて公開しています。
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シルク・ドゥ・ソレイユとディズニーアニメーションのコラボレーション、とうとう開幕
2021年11月18日、フロリダ ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートのディズニー・スプリングスにある専用シアターのオリジナル演目『Drawn to Life』(ドロウン・トゥー・ライフ)がとうとう開幕しました。コロナの影響で大きく延期となっていた本演目ですが、ウォルト・ディズニー・ワールド50周年に合わせほぼ毎夜、大変質の高いステージが演じられています。今回の取材では時間を取って自腹ででも見に行きたかったのですが、無事取材項目に入っており、一番期待していた演目でした。が、その期待をはるかに超える内容である上に、知らなかった事実もたくさんあり驚きました。
この演目は、“ディズニー・アニメーションに対するシルク・ドゥ・ソレイユからのラブレター”とも表現されており、これまで数々の演目を身体で表現することにたけるシルク・ドゥ・ソレイユの表現力と、ディズニー・アニメーションという音楽と動きをそれぞれ分解し再構築した、というモノになっています。かつてディズニー・スプリングスの前身であるダウンタウン・ディズニーでもシルク・ドゥ・ソレイユはウォルト・ディズニー・ワールドでのみ開催していたオリジナル演目『La Nouba』を上演していました。こちらは純粋なシルク演目であり、特に場所柄の特別なことはなかったのですが、2017年末に閉幕後、新たな演目として発表されたのは初めての「ディズニーとのコラボ」。個人的にどのようなものになるか、大変期待していました。

そして実際にフタを空けてみると、ディズニー・アニメーションからは伝説的なアニメーター、エリック・ゴールドバーグ(ジーニー、フィル、ルイ、タトゥーのマウイなどのチーフアニメーター)が参加し、特長的な柔らかなタッチのペンシル画を提供しています。日本でディズニーとの協業というと、どうしても「(ライブキャラクターとしての)ミッキーマウスが登場する」ことをイメージしがちですが、今回の『Drawn to Life』ではディズニーのアニメーションそのものが大きくフィーチャーされており、この点は特筆に値します。
この「アニメーション」としてのディズニーというのが大変興味深く、かつてディズニー・アニメーション・スタジオにて行われていた、手書き時代のアニメーションを今回のステージでは再分割、再解釈を行い、重要な要素をピックアップした上で、「身体能力で」それを再現するという、見るのは簡単でも、作るのは大変な行為を行っているように見えます。
CGがなかった時代、チーフアニメーターは重要なシーンのペンシルラフを描き、多くのアニメーターがその中間の絵を追加し、セル画に転写した後、絵の具を使って彩色を行い撮影するという、昔ながらのステップでアニメーションを作っていました。今回のステージでは、それらの工程をイメージするようなシーン構成で、かつ、それをアクロバティックな、乱暴に言ってみれば“サーカス”的表現で行うわけです。これ、言葉では何言ってんだみたいに聞こえると思いますが、実際の演目ではそれを直感的に、スッと入ってくるように行っているのです。
シルク・ドゥ・ソレイユのステージを何度か体験している人ならなんとなく理解してもらえるかもしれませんが、それをさらに“ディズニー・アニメーション”で表現していることにめっちゃくちゃ驚きました。本当にすごかった。
個人的に感動した点は、彩色部分のシーンでは演者がすべて女性になっていたこと。これ、実際のアニメーション制作の現場において、彩色は女性の仕事だったんですよね(白雪姫のセル画に化粧を施すでおなじみ)。実際にロビーにてそういう説明も記されていたので、たまたまというわけではなさそう。これに加え、ウィンドミルの演目にあの短編を合わせるか!とめちゃくちゃ感心しました。いや本当にスゴイですよこれ。シルクファンもディズニーファンもうなると思います。

この作品は、亡き父から送られた未完成のアニメーション作品を手にした彼の娘、ジュリーをめぐるストーリー。“Mr. Pencil”に導かれ、子供の頃に見たディズニーアニメーションを思い出し、幼き日に父親と描いた世界を思い出しながら、アニメーションにおける感動的な冒険の旅に出発するというもの。“描く”ことが二人をつなぐ大きなカギとなります。グッズのタグラインも非常に印象的でした。


支えているのは日本人パフォーマー
そして、もっと驚いたのは、この演目では日本人のパフォーマーがチームとして、多数参加していることです。

今回お話を伺ったのは、男子新体操チームの6名と、一輪車のチーム5名。このメンバーはチームを作って本作に登場しています。
私もあまり認識していなかったのですが、男子新体操とは日本が発祥である演目であり、今回では物語の冒頭、アニメーションの動きを表現するシーンで大きくフィーチャーされています。この演目がなければショーが成立しないと思うような重要なシーンで、日本の方が大活躍されているのは本当にうれしいですね。実は2020年3月にプレスプレビューにて実際のシーンを私も見ていたのですが、まさか日本の方とは思っておらず本当にびっくりでした。
メンバーの方は「いい意味でディズニー感が強すぎない、その上でシルクの良さもうまくコラボレーションできている内容と思っている。アクロバットも主張しすぎず、きれいに収まっているのでぜひ2,3回観て、全体を感じてほしい」(弓田速未氏)というコメントや、「男子新体操は日本発祥。他の世界のどこでも見られないものをここで見せたい。アニメーターの世界と1つになったとき、世界が動く。それが表現できているのではないかと思っている。シンクロしたアクロバットをぜひ注目してほしい」(朝留涼太氏)というコメントをいただきました。





そして一輪車のチームは、劇中ブルーフェアリーとして登場します。「風が吹くようなスピンを見てほしい」(前野はな氏)や「お客様とのコミュニケーションを大事にしている。演技中も客席の方と目を合わせてニコッと笑えるように。自分の100%を出している」(田上絢子氏)とおっしゃっていました。
こちらも非常に重要なシーンで、しかも大変映えるパフォーマンスでした。言われなければ日本の方だとは分からないほどで、その点でも本当に驚きました。






ウォルト・ディズニー・ワールドの夜の行動を変える最大のピースへ
ウォルト・ディズニー・ワールドは50周年を迎え、各パークではアイコンとなる施設にプロジェクションマッピングを行う『ビーコン・オブ・マジック』だけでなく、マジック・キングダム・パークでは『ディズニー・エンチャントメント』、エプコットでは『ハーモニアス』と、夜のショーがたくさん用意されています。そしてまもなく、ディズニー・ハリウッド・スタジオではアップデートされた『ファンタズミック!』も帰ってくるわけです。
しかし、最も重要なピースは間違いなく『Drawn to Life』であると、個人的には思います。特に広義のディズニー好きにとっては宝物のような時間になると思います。アニメーションをここまで細かく再構築したのは本当に驚きで、それを全く想像できない形で表現に変えたのは、シルク・ドゥ・ソレイユの力そのものだと思いました。さらにそこには多くの日本人パフォーマーがいると言うだけでも、見に行きたいと思うポイントになるのではないでしょうか。
アニメーションという言葉の原義には、ラテン語のアニマ(霊魂、生命)が転じて、“いのちを吹き込む”という意味を持っています。これまでもシルク・ドゥ・ソレイユは、身体能力の限界を表現のツールとしてさまざまな演目という形で表現していました。実はディズニーアニメーションとシルクの目指すところは、さほど違いはないのだというのを発見できたことが大きな収穫でした。ぜひ、皆さんのフロリダ滞在に、1度はこの『Drawn to Life』を検討してみてください。至福の時間になるはずです。
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LINK: シルク・ドゥ・ソレイユの新演目「ドロウン・トゥー・ライフ」がディズニー・スプリングスで11月18日スタート(フロリダ)|パーク&リゾート|ディズニー公式
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写真クレジット:© Disney