50周年のウォルト・ディズニー・ワールドに行く前に“聴く”

フロリダ ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート

ウォルト・ディズニー・ワールドに行きたい?じゃあ聴け。いいから聴け。

2021年10月1日から18カ月間、フロリダ、ウォルト・ディズニー・ワールドは50周年イベント『The World’s Most Magical Celebration』が開催されています。日本人の海外渡航、特にレジャーにおける渡航はまだ現実的ではないものの、ワクチン接種も進み早い人ならばこの大型連休にハワイ、パリ、カリフォルニア、そしてフロリダに向かうという方もいらっしゃるのではないかと思います(香港、上海はまだ無理ですよね……)。

その中でも注目は、30周年のディズニーランド・パリと50周年のウォルト・ディズニー・ワールド。パリはまだ機会がなくて私は行ったことがないので、ここではフロリダ、ウォルト・ディズニー・ワールド旅行へ向け、まずは心の準備をしていきたいと思います。ここまで読んでなんだそれと思った方はこの先長いと思うので次の記事に行ってください。

海外パークの準備は、いかに「自分をアゲていくか」にあると私は考えています。ある意味自分に自己暗示をかけて、見るもの体験するものすべてにスゲエ、3兆点、みたいないい方ができた方が絶対に楽しいんです。自分にマウントかけていく——それが令和のスタイルです。定かではありませんが。

多分アゲ方にも十人十色あると思いますが、私にとっての最も簡単なアゲ方は“音楽”です。まずはCMなどをご覧ください。

これらCMでかかっているのは、『The Magic is Calling』。50周年のウォルト・ディズニー・ワールドのアニバーサリーソングその1です。

LINK: The Magic Is Calling (From “Walt Disney World 50”)[デジタル配信] – Journi – UNIVERSAL MUSIC JAPAN

もう一つの50周年記念ソング『You are the Magic』についてはすでに熱く語りました。現時点における最高のパークミュージックだと確信しています。

で、『You are the Magic』はあくまでショー『Disney Enchantment』のテーマ曲として制作されており、楽曲としての完成度は花火ショーという、1曲まるごと聴かせることが可能な場である前提で作られているため、いくらでも聴かせる要素が詰め込めるわけです。以前レリゴーの記事でも触れましたが、パークミュージックはパレードやショーなど、1曲まるごと聴かせる時間が取れない演目もあったりして、パークエンターテイメントを作る方はかなり苦労されているのではないかと思っています。どんなにいい曲、完成度の高い曲を作っても、1フレーズしか聴かせられない場合もあるわけですね。その意味ではアアーアアーでおなじみ『イントゥ・ジ・アンノウン』の完成度はスゴイと思っています。

パークのアニバーサリーは最近、1曲だけじゃなく複数用意されることも増えてきました。それを踏まえ、『The Magic is Calling』だけを単体で聴くと、結構淡泊な作りに聞こえたりしませんか?緻密に作られている『You are the Magic』に比べてしまうとさっぱりした印象に聞こえますよね。でも、それこそが多分、この楽曲の狙いなのではないかと考えています。

『The Magic is Calling』が問いかけるもの

『The Magic is Calling』という楽曲はAメロ、Bメロのみの構成で、しかも歌詞もそれほど込み入っておらず、魔法があなたを呼ぶ、と連呼するシンプルな構成です。それでも強烈な印象を与えることには間違いありません。

The most magical place on Earth、というウォルト・ディズニー・ワールド(およびディズニーパークス)そのものを表現するワードが入っており、教科書的なものともいえます。それだけに地味にとらえられがちですが、これはおそらくアニバーサリーにおけるメインテーマの“役割”が関係します。

個人的に最も記憶に残っているアニバーサリーは、ちょうどオーランドに赴任していたころに行われていた、ウォルト・ディズニー生誕100周年を記念した『100 Years of Magic』(2001〜2002年あたり)です。このタイミングでエプコットにマジックワンドが付き、ディズニー・ハリウッドスタジオにミッキーのソーサラーハットが飾られたアレです。

この時のテーマソングは『Share a Dream Come True』。東京ディズニーリゾートでも使われたことがある楽曲なのですが、当時はウォルト・ディズニー・ワールドのショー、パレードのすべてで5分前にこの楽曲が流れ、ウォルト・ディズニーの名言を紹介するとともに、ナレーションがかぶせられていました。なので、100周年イベントの期間中、あらゆる場所でこのアニバーサリーソングが聴けたのです。それも、最も強いメッセージである「夢の実現を分け合おう」(『There’s A Great Big Beautiful Tomorrow』における“It’s a dream come true for you and me”)の部分が繰り返されるため、めちゃくちゃ印象に残りました。

それを踏まえると、今回の『The Magic is Calling』の役割が見えてきます。アニバーサリーソングの使命は、繰り返し聞けること、シンプルであること、そして、メッセージがあること。実はそのミニマムな部分をクリアするための楽曲なのではないか、と私は考えています。この文脈で言えば、東京ディズニーリゾート35周年のワールドバザールで祝祭を演出した『Brand New Day』(のイントロ)は3兆点でした。

魔法が呼んでいる。そのことをシンプルに、来場者に伝えること——でも、そうではないのです。

Answer the Call——問いかけに答えるのはあなた

この楽曲のメッセージは“The Magic is Calling”ではないのです。最初に挙げた2つのCMを聴いてみてください。その部分は歌詞が載せられていません。唯一、言葉として、歌として表現されているのはむしろ“Answer the Call”——その呼び掛けに“答えよ”と述べているのです。これはまさに、『You are the Magic』およびナイトショー『Disney Enchantment 』、そして『モアナと伝説の海』を読みとく鍵となる「自らが自らを定義し、自らが動く」ことにほかなりません。ウォルト・ディズニー・ワールドは魔法を用意し、あなたを呼び掛けています。しかし、呼び掛けに答えなければそれは意味がありません。呼応するように“あなた”が、あなたの意志で動くことで、魔法が完成するのです。

これまでウォルト・ディズニー社は、ことあるごとに中心にあるものが「ストーリー」であると明言していました。前会長のボブ・アイガーは繰り返し「ストーリー・イズ・キング」だと述べています。ディズニーのビジネスはそのストーリーを映画館で、自宅で体験させ、その延長線上にあるテーマパークでも体験を続けようとしています。そこでストーリーを見るだけでなく“没入”(immersive)させることにより、そのストーリーを自分ごととしてさらなる体験価値を提供しているわけです。ここでディズニーは、おそらく受動的な没入から、自らが望み自らが定義する“能動的な没入”の価値を最大にしようとしているのではないかと私は考えています。その前提に立てば、今回のアニバーサリーソング『The Magic is Calling』が果てしなく計算し尽くされた、すさまじい楽曲であると感じられるのではないでしょうか。

きっと現地に行くと、さまざまな場所でこの楽曲がナレーションとともに流され、最後の“Answer the Call”の部分で最高潮に盛り上がり、本丸である各種エンターテイメントにつながる、最高のアニバーサリーが演出されていると思っています(本当に流れているかは知らん)。そして、こうやって自分をアゲていくことで、『Magic is Calling』や『You are the Magic』をイントロドンで号泣できるからだが作られていくわけです。めんどくさいな。最高だな。

さあ、あなたも“Answer the Call”の準備を今日からやってみましょう。

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