キラメキはあなたの心の中に——『Disney Enchantment』の良さを探る(update)

長えのでまとめると、「ウォルト・ディズニー・ワールド行きたいです」。

Disney CEO Bob Chapek (left) and Executive Chairman Bob Iger (right) re-dedicate Walt Disney World Resort in front of Cinderella Castle at Magic Kingdom Park in Lake Buena Vista, Fla., Sept. 30, 2021, on the eve of the vacation destination’s 50th anniversary. (David Roark, photographer)

2021年10月1日、華々しくウォルト・ディズニー・ワールド50周年『The World’s Most Magical Celebration』がスタートしました。

キックオフにおいては、公式パークブログが主催で、2つの新ナイトエンターテイメントが続けてライブ配信されました。その2つとはエプコット『Harmonious』とマジック・キングダム『Disney Enchantment』。後者においてはボブ・チェイペックとボブ・アイガーの2人のボブが登場、50周年のキックオフを祝いました。

ありがたいことにセレモニー、デディケーション、そして『Disney Enchantment』がそのままアーカイブとして残されています。もし見ていない人はぜひこちらを。大丈夫、生で見るよりもはるかに下回る体験ですので、もうこれをいきなり見てしまってもさほど問題はないと思っています。普段ネタばれにうるさい私が言うんだから信頼してくれ。ただし判断はもうちょっと待ってくれ。

(update注:アーカイブが非公開になったのでabcのアーカイブを追記しました)

ディズニーの“パーク構文”

私、このショーを生で見たことがなく(当たり前)、この配信映像という非常に限定された体験であることもさっ引いて、このショーに100点満点で3兆点出しました。まーたいつものか、と思うでしょう。今回はその3兆点を解説したいと思います。

3兆点は、実は花火やプロジェクションそのものではありません。そのほとんどがメインテーマ曲である『You Are the Magic』のデキです。この1曲が、ショーの体験のかなりを占める、すさまじい名曲度合いです。

このテーマ曲は複数のグラミー賞を受賞したフィリップ・ローレンスが手がけたもの。同氏はかつてウォルト・ディズニー・ワールドのキャスト(パフォーマー)であったこともあり、その端々に高度なパーク構文が含まれ、それがすべて私にヒットしました。

パーク構文ってなんだよ!って思うでしょう。たったいま作った言葉です。要するに1回聴いただけで「あっこれディズニーパークの音楽じゃん」と思えるかどうかを示すもの。最近ではパーク音楽じゃないのにパーク構文そのものの作曲をぶちかましてきた『Sparkle』などがそれに当たるでしょう。

そして今回、50周年に合わせて作られたこの楽曲はまさにド直球です。特に歌詞。

  • いきなりピノキオ、むしろディズニーを代表するフレーズ「♪ Make a wish upon a star」から
  • ウォルト・ディズニー・ワールドという地を端的に表す「♪ You have traveled from so far」。かつてはEpcot『IllumiNations』オープニングでもこのニュアンスが使われていた
  • しかし、「♪ And now you’re Close enough to feel it」とつなぎ、ウォルト・ディズニー・ワールドという地に立った喜びを伝える
  • 再び同じフレーズを用い「♪ Make a wish upon a star ♪ The magic is here It’s here for you and me」ここが約束の地であることをアピール。さらに「You and Me」はパーク構文の重要なもので、これがでてきたときには『There’s A Great Big Beautiful Tomorrow』同様、大きく考えてウォルトとあなた(ディズニーとあなた)と置き換えるとしっくりくる
  • ディズニー作品を想起させる『♪ Oh, take a magical carpet ride, ♪ Travel to Neverland Just believe that you can』フレーズを連発。

Aメロだけでもこれだけのギミックを詰め込んでいます。恐ろしくないですか。いろんな意味で。

『There’s A Great Big Beautiful Tomorrow』同様、大きく考えてウォルトとあなた(ディズニーとあなた)と置き換えるとしっくりくる、のところが分かりにくいという指摘をいただきました。ニューヨーク世界博を発端としたアトラクションのメインテーマで、シャーマン兄弟の作品である『There’s A Great Big Beautiful Tomorrow』の歌詞の重要部分はここ。

Man has a dream and that’s the start
He follows his dream with mind and heart
And when it becomes a reality
It’s a dream come true for you and me

ここに出てくる“Man”とはウォルト・ディズニー本人です。この部分、ちょっと主語が不思議で、Manことウォルトが夢を持ちそれを努力によって現実にしたとき、夢がかなったとするのは“You and Me”なんですよね。これはウォルトの(おそらく正確にはディズニーという概念の)大きなポイントで、世界をよくしていくのは個人のためではなく皆のため、その成果は世界に還元されるべきという理念が含まれています。なので、You and Meというフレーズを見た、聞いたときには、もはやパーク&ウォルトのアンセムである『There’s A Great Big Beautiful Tomorrow』を思い出してください(下記動画、該当フレーズでちらっとウォルトを見るあたりを注目)。

そして、最もパーク構文、それも最新の構文を入れ込んでいるのがサビ部分です。最新の構文というのは、端的に言えばかつてのプリンセス構造における「待つだけのプリンセス」(〜シンデレラ)、「行動するプリンセス」(アリエル〜ラプンツェル)を超えた、「自らが立ち位置を定義するプリンセス」(モアナ〜)のことを指しています。

このプリンセスたちに共通するのは、かつてのプリンセスがプリンスに求めたように、冒険に求めたように答えを他に求めるのではなく、実は既に自分の中に答えがあることが重要です。答えは自分の中にあることが分かっていても、それを腹の底から認識できなければいけません。遠くまで旅をした結果、最初から答えが自分の中にあること、自分こそが答えを決めることを学ぶことが、昨今のプリンセスストーリーの根幹にあります。私はこれを『名乗り作品』と呼んでます。自分の名前を自分自身が名乗ることで、自らの立ち位置を定義し、前に進めるのです。その意味では実写版クルエラはいい名乗り映画だった。

これを踏まえ、『You Are the Magic』を見てみましょう。

  • ♪ Let your heart guide the way ♪
  • ♪ And all your dreams will follow ♪
  • ♪ Doesn’t matter where you are ♪
  • ♪ ‘Cause the spark is in your heart ♪
  • ♪ Wherever you go, you have it ♪
  • ♪ ‘Cause you are the magic ♪

どうですか!!この完ぺきな歌詞。これ、かつて『Moana』のインプレ書いたときに思っていたことが、ものすごく端的に表現されていて腰を抜かしそうになりました。すべては自分の心にある。それに気が付きさえすれば、前に進むことができるのです。血筋も名目も関係ありません。“誰もが”その資格を持つのです。ディズニーにおけるダイバーシティ&インクルーシブを表現した、すさまじい作品です。

加えて、パーク構文の原則として、見逃せないフレーズがあります。それはここ。

  • ♪ If you believe today ♪
  • ♪ Then it’s possible tomorrow ♪

これ、要するに“ディズニー”のモットーである『If you can dream it, you can do it.』(If we can dream it, we can do it.)そのものなんですよ。特にIf we……のバージョンはエプコットのメッセージでもあり、ウォルト・ディズニー・ワールド50周年に相応しいとしかいいようがないフレーズです。これをさらりと出してくるのがすさまじい。

かつて、日本以外のパークはある程度「夢」に厳しく、夢を持ち、努力することでそれが初めてかなうという、ウォルト名言でいうところの「All our dreams can come true, if we have the courage to pursue them.」(すべての夢はかなう、もしそれを追い続ける勇気があれば)が中心にありました。

日本はわりと「夢を持ち続ければ願いは叶う」というかんじのフワッとしたものだったのですが、最近ではむしろアメリカのほうがかつての日本のように、魔法は自分の中にある、だから大丈夫といった印象を受けるようになりました。これはちょっと興味深いですね。

これを踏まえ、もう一度楽曲を堪能してみよう

以下、34分30秒ころから続けてみてください。

もうほんと「♪ Let your imagination fly」とかをさらりと入れてくるのなんて完全に素人じゃないですよね。東京ディズニーランド20周年の『ミッキーのギフト・オブ・ドリームス』の楽曲を使い、かつて同じキャッスルフォアコートで行われていた『Dream along With Mickey』でのLet your Imagination soar!につながる一瞬。全くぶれてないんですよ。そして特に、このプレゼンテーションにおいては、パーク部門代表であるジョシュ・ダマロ氏がウォルトの『It Takes People』を引用しつつ、キャストたちにこの楽曲をささげています。これもすごいことですよ。

実はここまでが、実際のショーを観るまでの感想。この時点で2兆8000万点は出ています。まあこの辺は勝手な想像だろうと思ったところ、なんと実際のショーではディズニーパークショーの典型的なシナリオである起承承承承承承承転結の転のヴィランズ、結のその返しの最重要部分において、私が思うにレリゴーを超え、ここ10年のディズニー史の中で最重要楽曲だと思っている『I am Moana』が使われているではありませんか。ほぼ同一メロディであり最もプロモーションで使われた『How far I’ll go』ではなく、その楽曲が使われたことはもはや完全にイマジニアと認識が一致したとしか言いようがない喜びを得ました。個人の感想です。でもそういうふうに私個人が考えられたんだから、自分にとってはこのショーはめちゃくちゃ感動できる良ショーなんですよ。

しかもですね、アイ・アム・モアナ!の部分。あえて歌詞は載せられず、『How far I’ll go』から加えられた5音が演奏のみで表現されています。これは間違いなく、アイ・アム・(自分の名前)!と心の中で叫ぶべきシーン。あなたがそこにいて、あなたが(心の中で)シャウトすることにより、このショーが完成するのです。

このショーのナレーションは、The Imagneering Storyでもナレーションを担当したアンジェラ・バセット。こんなメッセージが発せられています。

And so we have found what we seek the magic of dreams come true in fact lies within you.
This magical kingdom remains a beacon to those with a wish in their heart gifting every person who walks through these gates this enchantment.
Look inside yourself and realize that you have everything you need to make all your dreams come true.
Anything is possible, for you are the magic.

(意訳)
そしていま、私たちが求めるものを見つけました。夢をかなえる魔法は、実はあなたの中にあるのです。
この魔法の王国は、心に願いを持つ人たちへの道しるべであり、この門をくぐるすべての人にこの魅惑(Enchantment)を与えます。
自分自身を見つめ直し、夢を叶えるために必要なものをすべて持っていることに気づくでしょう。
なんでもできるのです。あなたこそが、魔法なのですから。

これ、現地で聞いたら号泣すると思いました。完全なる解釈の一致。イマジニアよく分かってんな!!!!(上から目線)

しんみりしていいのか問題はあるが

まあただ、個人的にもWorld of Colorよりこっち、ナイトタイムスペクタキュラーが長すぎる問題がずっとあると思っています。もっとぎゅっと圧縮できるとは思うんですよね。あと、どストレートのディズニーパーク構文をインプリメントするとどうしてもまじめになりすぎてしんみりするので、もうちょっとブチ上がるだけのショーと同時にやってくれるといいなあ、と思いました。具体的には『Mickey’s Mix Magic』。これを30分おきにやろう。メインストリートの設備もできたんだし。

LINK: Mickey’s Mix Magic At Disneyland | Disneyland Resort

いまのところ、実際にショーを観た現地ブロガーの評価は厳しめではあります(エプコット『Harmonious』は特に)。ただ、今の日本人ファンはほとんどが実体験を伴わないエアプレイでの感想ですので、厳しめの感想は全部ミュートした上でエアプする人という烙印を押して、良かったなどという感想も全く参考にする必要はないでしょう。本番は実際にこの目で見て、体で体験することです。

かつてよりディズニーはパーク体験をバーチャルにはしないと言い続けています。

ウォルト・モスバーグが「ディズニーは物理的なパークではなく、デジタルに移行しないのか?」的なことを問うと、トム・スタッグスが「パークは360度+五感で感じるもの」だと即答。アトラクションの演出や効果は相当デジタル化されていると、新スターツアーズなどの事例を紹介していました。

https://dpost.jp/2013/05/30/wp-13621/

しかも今回、そのうるせえ海外パークブロガーたちが一様に『Beacons of Magic』をべた褒めしています。特にエプコット。さらには資料でしか存在しない、ハリウッドタワーホテルのTip Top Clubも再現され、これこそが50周年の最大のサプライズだったのかもしれません。東京ディズニーリゾート35周年も何より注目されたのはワールドバザールですからね。

ウォルト・ディズニー・ワールドの50周年は2021年10月1日から18カ月間の予定です。はやく海外旅行ができるようになるといいなあ。

ウォルト・ディズニー・ワールド50周年『The World’s Most Magical Celebration』についてはこちらの記事でまとめています。ぜひどうぞ。

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