講談社『東京ディズニーリゾート トリビアガイドブック』を読んだ&パークストーリーの読み方をS.E.A.に学ぶ

なんと、講談社さまより送っていただきました。ありがとうございます。

あのディズニーファン誌を毎月発行している講談社から、2021年7月6日に最新版『東京ディズニーリゾート トリビアガイドブック』が発売されます。早いところなら書店にもう並んでいるはず。このトリビアガイドブックは2015年版が発売されて以来のアップデートということで、古くからムックを買い続けた方には懐かしさも感じるかもしれません。

トリビアもある“正統なガイドブック”

私自身はトリビアガイドブックシリーズに初めて触れまして、どんな構成なのか見てみると、実際のところはトリビアは充実しているものの、紙面自体は東京ディズニーリゾートのアトラクションやショーだけでなく、昨今の状況に合わせアプリの紹介やエントリーシステムを含む、“正統な”ガイドブックがメインという印象です。そのため、東京ディズニーリゾートに行く前に予習したいという方、主にマニア層ではない方たちにぴったりという印象です。

サンプルを見ると、ガイドとトリビアの比率も分かるのではないかと思います。トリビア専門ページもクイズ形式になっており、それなりの分量があります。マニアも気が付いていないものから、逆にそれがトリビアになるのかという驚きもあるかもしれません。それこそがこの本の対象者であり、広く客層を取っているという印象があります。

その意味では、パークに久しぶりに触れるという方、特に地方から東京ディズニーリゾートに向かう方に取って、もう一歩踏み込んだパーク体験をしたいという方にはお勧めできるガイドブックだと思います。少なくとも講談社という、既に東京ディズニーリゾートのノウハウを知り尽くしたオフィシャルな出版社のムックです(ディズニーファン誌を見ても分かるようにディズニー・アーカイブスともつながりがある編集部)。そこから出てくるトリビア本なのですから、少なくとも「東京ディズニーリゾートがゲストに提供できるストーリー」レベルが提示されているので超安心です。野良本は死ぬ。

マニアの皆さまへ——みんな大好きトリビアだから

さて、ここからはマニア向けガイド。

個人的には、このdpost.jpでトリビアそのものを取り上げることはあまりしたくないと考えています。それは発見の楽しみを奪う行為になりかねないから。ただ、ディズニーパークに限らずトリビアというのは一定の需要があることは理解しています。でもやっぱり「〜〜がここに隠れています!」という情報を基にパークに行って見つけるということは、単なる答え合わせになってしまうように思えるわけですよ。本来ならば、そのトリビアに相当する場所にいって、自分で見つけて、自分でその意味を考える……というのが、ディズニーが意図するパークの楽しみであると思うんですよね。

とはいえ、本書の持つ意味がないということを言いたいわけではありません。マニアにとってみると、この書に掲載されているトリビアのレベル感を知ることは重要で、普通の人(?)たちと一緒にパークに向かうというとき、このトリビアを知っておきつつ、それとなく誘導ができる良いマニアになるための教本と考えることもできるでしょう。要するにこれに書かれていないレベルのストーリーは、マニアが知っていたとしても「ガセネタなのでは」と考えることも可能でしょう。そういうことは結構ある。

その意味でも、本書はマニアが出していい情報のレベル感を知ることができる本といえるでしょう。この点に関しては、長い長い余談で触れます。

取材協力

この記事は「講談社ディズニーファン編集部」の取材協力(献本)にて公開しています。
物品、サービス、取材渡航費等の提供:あり/金銭の提供:なし

Opinion: From the “D”post

さて、ここからが本論です。

以下の文章はパークが語るストーリーに対する独自研究のようなもので、基本的に物証を中心として語っていきますが、イマジニアおよびその他読者のイマジネーションを阻害するものではなく、あくまで一個人の“想像”であるという前提で読んでください。バックグラウンドストーリーに答えはありません。みんなの中にみんなの数だけ、ストーリーがあるのです。決して問い合わせなどしないように。

表紙にも記載がありますが、本書にはみんな大好き『S.E.A.』(Society of Explorers and Adventurers)の記載が2ページほどあります。S.E.A.そのものに関してはTDR公式パークブログを。

LINK: 【公式】ワクワクしたい人にオススメ!大航海時代にタイムスリップできる場所とは・・・!?|東京ディズニーリゾート・ブログ | 東京ディズニーリゾート

LINK: 【公式】連載決定!【アートでめぐる東京ディズニーシー】|東京ディズニーリゾート・ブログ | 東京ディズニーリゾート

本トリビアガイドブックにおけるS.E.A.の取り扱いに関しては皆さんの目で見ていただきたいのですが、おおまかにその中で触れられているS.E.A.の事実は下記の通り。

なぜかここでハリソン・ハイタワー三世が触れられていない点はちょこっと気になりますが、それ以上に気になる点があるのではないでしょうか。それはフォートレスにおけるS.E.A.と、ソアリンで語られるS.E.A.に大きな時間の隔たりがあること。私自身は、ここにパークが語らない、もしくはS.E.A.自身が触れられたくないストーリーがあると言い続けています。

ちょうどいい機会なので、それを物証を中心に解説していきたいと思います。

S.E.A.は“2つ”ある

まず、ご存じ東京ディズニーシーからスタートした、『フォートレス・エクスプロレーション』から始まっている方のS.E.A.から行きましょう。ここでは名だたる、誰もが知る探検家、冒険家、研究家の肖像画が掲げられているだけでなく、S.E.A.の発祥に関しても明示的に記載されています。ここから、先の書の通りS.E.A.は16世紀に作られたものということが分かります。

その後、S.E.A.はストーリーが拡張されていきます。香港のヘンリー・ミスティック卿は、1908年ごろにミスティック・ポイントに屋敷を作ります。これこそが香港ディズニーランドに作られた『ミスティック・マナー』です。彼は(それ以前に作られていたであろう)S.E.A.の創設者の一人として当初語られております(ディズニー・バケーションクラブの会報「Disney Files Magazine」2013年春号)。

そして、東京ディズニーシー版タワー・オブ・テラーのハリソン・ハイタワー三世もS.E.A.のメンバーで、上記ミスティック・マナー内でもヘンリー・ミスティック卿をはじめとするS.E.A.メンバーとの写真が撮影されています(1899年撮影)。東京ディズニーシーのタワー・オブ・テラーは、ハリソン・ハイタワー三世が失踪したのが1899年12月31日とされていますから、こちらも19世紀のお話し。

そして、東京ディズニーシーのソアリン:ファンタスティックフライト。こちらは博物館の創設がMDCCCXV=1815年に作られ、カメリア・ファルコは2代目館長であることから、19世紀初頭に活躍していた方であることが分かります。

チェリーノ・ファルコ氏の名前が記されている

ということで、フォートレス・エクスプロレーションで語られる偉人たちは16世紀のお話しであるにもかかわらず、その他の(アトラクションで語られる)メンバーは19世紀中心であり、これだけでも少なくとも300年の隔たりがあることが分かると思います。

しかし、その点に関しては、少なくとも東京ディズニーシー内で語られるストーリーには全く反映されていませんし、本トリビア本に関しても当然ながら触れられていません。おかしいと思いませんか?

16世紀を境に考えると、その前後でそもそもの立ち位置が大きく違うことも分かるのではないでしょうか。フォートレス版S.E.A.を便宜的に『元祖S.E.A.』と呼んだとすると、元祖のメンバーは誰もが知る偉人たちです。そして、功績も多く残されており、彼らの偉業に異を唱える人はいないでしょう。

ところが、以降のS.E.A.メンバーは冷静に考えると“しょぼい”と思いませんか?遺跡を盗掘したり現地人をだますようにして美術品や骨董品を収集し我が物にするものが、レオナルド・ダ・ビンチやコロンブスと並んで評されるのでしょうか。しかし、その点についてはS.E.A.を語るストーリーではほぼ触れられることはありません。

その理由は……

実はこれ、ずいぶんと前から答えは出ています。

ぶっちゃけて言うと、イマジニアがさほど考えなくストーリーを作り出しただけという可能性もあるのですが、それをいうと終わってしまうので続けます。

その答えはここにあります。香港ディズニーランドでミスティック・マナーがオープンしたころに販売されていたグッズのタグです。

ちゃんと東京ディズニーシーのS.E.A.(16世紀)と、香港でのロード・ヘンリー・ミスティックが作ったS.E.A.(19世紀)の関係が書かれてた。(香港ディズニーランドで販売されている、ミスティック・マナー関連グッズより)

これによると、そもそも元祖S.E.A.とその後のS.E.A.とは全く別の組織であり、19世紀にヘンリー・ミスティック卿が『S.E.A.分会』(Local Chapter)を創設したことが、物証として残っています。そう考えると、歴史が分断されていることも理解できるでしょう。いわばいま語られている(フォートレス以外の)S.E.A.は元祖とは名前が同じだけの別組織であり、歴史的にも分断されていると考えてよいでしょう(そうでなければ、ヘンリー・ミスティック卿が“創設”(was formed by Lord Henry Mystic)とは言わず、メンバーに加入したとなるはず)。

これはつまり、休眠状態にあったであろう本家S.E.A.の名声を分会版S.E.A.がかすめ取り、『我らこそが正統な後継者である』といっているように見えます。彼ら分会にとっては、S.E.A.メンバーであることは“16世紀から続く伝統”であるわけです。

信頼できない語り手の存在

これをメタな視点から見ると、もはやいま見ることができる歴史はあとからやってきた分会版S.E.A.が“書き換えた”ものであり、パークで語られるストーリーはもはや分会版S.E.A.の“プロパガンダ”にすぎないわけです。その意味で、このトリビアガイドブックがそのプロパガンダに忠実にS.E.A.を紹介しているあたり、「よくできてるわ……」と思いました。ちなみにプレス向けに開催された、ソアリンの舞台裏をかなり細かく語ったツアーにおいても、トリビアガイドブックで記載されている方向性と一致しています。だから信頼できるのですよ講談社は。

なお、このプロパガンダが正だとすると、ソアリンキャスト(S.E.A.メンバーという設定)にこのことを伝えたとしても、正しい回答が帰ってくるわけがありません。この歴史を知らなければ「16世紀から続く伝統あるS.E.A.ですが何か?」と帰ってくるわけですし、史実が理解されていたとしても、真実を隠すために同じ回答をするわけです。というよりソアリンの時間軸は生誕100周年と、さらに時間軸があとであるため、このときのメンバーは分会出身であるという事実を知らない世代とも考えられます。真実が埋もれている状態。

つまり、S.E.A.に限らず、パークのストーリー(および漏れ聞こえてくるバックグラウンドストーリー)には、偽の歴史が含まれる可能性があるということです。ウソを伝える事がバックグラウンドストーリーに含まれるかもしれないと考えると、過去の膨大な(裏付けのない)トリビアは全部信用のできないものになるはずです。信じられるのは公式情報のみ(ただしそこにはプロパガンダも含まれるかもしれない)。ここまで計算していたらイマジニアもすごいですよ。絶対違うと思うけど。

余談:分会版S.E.A.メンバーの“その後”

ちなみに、明確にあとからのS.E.A.メンバーはだいたい非業の最期を遂げているか、大きな厄災が降りかかっていることが分かります。ハリソン・ハイタワー三世は言わずもがな。ヘンリー・ミスティック卿も屋敷が破壊されてあんな大騒動が起きています。ウォルト・ディズニー・ワールド、タイフーン・ラグーンのキャプテン・メアリー・オーシャニアも暴風雨をうけ、新たに登場した日本人S.E.A.メンバーであるDr. Kon Chunosukeもあんなことに。これを指して、分会版S.E.A.メンバーは私利私欲にまみれたことによる天罰が、きっちり下っていると考える方もいます。

で、例外がいるんですよね。新たにオープンしたソアリン:ファンタスティックフライトのカメリア・ファルコさんです。おそらくモデルになったのは、女性飛行士のアメリア・イアハートではないかと思われます。アメリアは本家ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー版ソアリンでも写真が飾られています。

そしてその元になっているアメリア・イアハート、どんな最期を迎えたかは……。ご存じない方はぜひチェックしてみてください。私は決して偶然ではないと考えています。

LINK: アメリア・イアハート – Wikipedia

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