LA Times、米ディズニーランド・リゾート年間パスポートプログラム廃止に関する論考を公開

説得力はありますね。

LINK: Disneyland killed its annual pass program. Why, and what’s next? – Los Angeles Times

ロサンゼルスのメディアでディズニーに関するセクションもあるLos Angeles Timesが、今回発表された米ディズニーランド・リゾート年間パスポートプログラム廃止に関する論考を公開しています。COVID-19が猛威をふるう現地における一大事件で、さまざまな専門家からコメントを取っています。

今回のプログラム廃止は、カリフォルニア在住者向けを含めデラックス/シグネチャー/シグネチャー・プラス/プレミアすべての年間パスポートを発売終了し、現在利用しているゲストに対し返金を行うというもの。そもそもは2020年3月15日から現在に至るまでディズニーランド・リゾートが臨時休園を余儀なくされており、いまだに再開のめどが立たないというのが前提です。

今回のLA Timesの記事では、現時点で年間パスポートが100万枚ほど販売されているという数値を踏まえ、コンサルタントのLeisure Business Advisorsが年間パスポート利用者の動向として、下記のように述べています。

“On a per-visit basis, the annual pass holders don’t make a lot of money for the park,” said John Gerner, a theme park expert and managing director of Leisure Business Advisors. “When they had excess capacity it made sense. Now they don’t have that capacity.

(テーマパークの専門家でありLeisure Business Advisorsのマネージングディレクター、ジョン・ガーナー氏は『年間パスポート利用者は、パーク来訪都度に多くのお金を消費していない』と述べる。ディズニーランドのパークが過剰なキャパシティを持っていた時には(年間パスポート施策は)理にかなっていた。しかし今ではキャパシティに余裕はない。)

https://www.latimes.com/business/story/2021-01-16/disney-annual-pass-disneyland

しかも年間パスポートプログラム廃止は結果的にウォルト・ディズニー社に対して“利益”となるとし、ガーナー氏は「災い転じて福と成す可能性もある」(it is possible that this is a blessing in disguise.)と述べています。

既にダイナミックプライシングを導入、しかし……

LA Timesはこれまで米ディズニーランド・リゾートが行ってきた施策として、2016年のダイナミックプライシング導入、さらに2019年のFlex Passport導入などを挙げています。これらは閑散期に人を集め、繁忙期を適正にするという意図があり、これらは継続して行われるだろうとしています。ただし、問題はそれでも改善につながっていないという点にあります。

ファーミングデール州立大学の経営学教授、Martin Lewison氏は下記のように述べています。

Martin Lewison, a professor of business management at Farmingdale State College in New York, noted that the Disney parks have been raising prices regularly for several years without seeing attendance numbers diminish. That suggests they can charge even higher prices without losing demand, he said.

“When you are raising prices and demand is not falling, that means you are leaving money on the table,” he said.

(ファーミングデール州立大学の経営学教授、Martin Lewison氏はディズニーのテーマパークがチケット価格を値上げしているにもかかわらず入園者数が下がらないことに注目、それはディズニーが需要を失うことなく、より高い価格を提示しても問題がないことを示唆すると彼は述べる。

「価格を上げたとしても需要が落ちない。これはつまり、あなたがテーブルの上にお金を残していることを意味する」と彼は述べる。)

https://www.latimes.com/business/story/2021-01-16/disney-annual-pass-disneyland

さらに同氏はCOVID-19の影響下にある現状について、「人々は旅行ができない状況で休暇中の貯金箱は膨らんでいる。ディズニーはそのシェアを取りたいと考えているのではないか」とも述べています。

LA Timesは新たな年間パスポートプログラムの登場時期について、COVID-19の現状とワクチン配布のスピードにかかっていると述べています。しかし、業界の専門家たちは例えワクチンが効果的に機能した場合であっても、年間パスポートプログラムはすぐには再開しないと予想していると述べています。このパンデミック後であってもパークに一定のニーズがあり、キャパシティ問題が再燃すれば年間パスポートは可能な限り延期されることになります。

先のコンサルタントは「直感では、来年も再開することには疑問だ」と述べています。

Opinion: From the “D”post

全体的にはすべてのコメントが非常に説得力があり、おそらく外れていないと考えています。

じゃあなぜウォルト・ディズニー・ワールド側は普通に再開して、年間パスポートもそのままなのかというと、東西パークではその役割が全く違っていて、ウォルト・ディズニー・ワールドはホテル宿泊を伴い、ある程度の期間滞在する「リゾート型ディズニーテーマパーク」であるのに対し、ディズニーランド・リゾートは都市近郊に位置し、都市に住む人が対象となる「都市型ディズニーテーマパーク」です。

リゾート型は家族がまとめてやってきて一定期間滞在してまとめて帰るというスタイル。年間パスポートはそれなりに売れてはいるものの、買うのは近隣住民(オーランドはそこまで人口密度が高くない)のみで、パーク入園を事前予約することでコントロールできるという状況にあります。だからこそマジックバンドのような高価なものを無料配布していてもペイできたといえるでしょう。

かたや都市型ディズニーテーマパークは潜在年パスホルダーが多く、今回の記事ではその数が「100万人」としています。家が近いファンが多く、さっときてさっと帰ってしまう。しかもあまりパークにお金を落とすことなく、パークのキャパシティを圧迫するという状況です。その意味では、年間パスポートプログラムは悩みの種となっていたのかもしれません。

そこにやってきたCOVID-19の波は、あらゆるものをリセットするには非常によい機会で、今回の全リセットは一時的には財政を圧迫するものの、おそらく年パス利用者は「ワンデーパスポートを購入してでも入りたい」という支持層も一定数存在すると思いますので、確かに逆に利益率や客単価を大きく変える可能性がありますね。

で、これですよ。

実際のところ、ウォルト・ディズニー・ワールドは再開後に年間パスポートを早々に返金受付しており、続いてオリエンタルランドも東京ディズニーリゾートの年間パスポートを一括して返金、延長はしないと発表しています。

東京ディズニーリゾートは年間パスポートプログラムを廃止とは明言していないものの、「今後の年間パスポートの取扱いにつきましては、2021年3月末までにあらためて本ウェブサイトにてお知らせいたします」とのみ書かれています。なお、これまで販売されていた東京ディズニーリゾートの年間パスポートは11万7000枚と報じられています。

LINK: 【公式】年間パスポートの購入方法 | 東京ディズニーリゾート

リゾート型ディズニーテーマパークと都市型ディズニーテーマパークで異なる対応ということを考えると、東京ディズニーリゾートがどっちなのかは明確ですよね。アナハイムとは異なり電車で行けるテーマパークは、ドアトゥドア1時間以内で行ける人の数が違います。東京ディズニーリゾートも慢性的なキャパシティ不足でしたから、米ディズニーランド・リゾートとおかれた境遇は非常に近いと思っています。むしろ本家は駐車場のキャパシティが先に限界になることである程度のストッパーになっていましたが、東京はそれがない分コントロールが難しいわけです。

客単価についてもおそらく、本家ディズニーランドと変わらず「年間パスポートの客単価はそれほど高くない」という予感がしています。これが正しいかどうかは、2021年1月末に発表予定のOLC10〜12月期四半期決算の「客単価」推移が大きな参考になるはず。この期間、年間パスポート利用者は抽選が当たらない当たらないと言い続けていた期間で、それにもかかわらず前年比で客単価が上がったとしたら、その仮説は間違ってなさそう、という結論になるはず(ちなみに7〜9月期四半期決算は再開の需要増で客単価が上がっています。ついでに言うと年間パスポート利用者が入園できない期間の動向について「入園者数を制限した運営をする中で、ゲストの新たな楽しみ方を確認することができたことは収穫」というコメントも出ている)。

こうなると、東京ディズニーリゾートもそう簡単にこれまでの年間パスポートプログラムを再開することはできないと私は考えています。おそらく表向きはSCSEのSのため、とすると思いますが、COVID-19の影響があり、かつ営利企業としてそれなりのメリットがない間は、定額入園し放題の仕組みは実施する意味がないはず。今のままだとすると繁忙期にキャパシティを圧迫するのに客単価が低いため、いくらロイヤリティが高かったとしても、ねえ。

なんとなくですがこれまでと同じ金額(もしくはやや低い額で)Flex Passport的平日のみ/土休日は事前予約制の限定的なパスポートを発売することで年パス再開という建前を満たし、数年後COVID-19がほぼ完全に収まったとしたら、駐車場代込みとかさまざまなプレミアを加えた上で、超高額な年間パスポートを販売するとかじゃないかなあ、とか。

知らんけど。

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