AT&Tとタイムワーナーの合併承認、そしてコムキャストがディズニー提案を上回る650億ドルのキャッシュを提示

予想されていたシナリオのうち、大混乱をもたらしそうな方向に着実に進んでいます。

LINK: Comcast bids $65 billion for most of 21st Century Fox in challenge to Disney

AT&Tによるタイムワーナーの買収、一歩前進

まずは前提となる買収劇について。米通信大手のAT&Tによるタイムワーナーの合併に関し、米司法省が反トラスト法をもとに買収差し止めを求めた訴えに対し、2018年6月12日、米司法省敗訴の判決が下りました。これによりAT&Tによるタイムワーナーの買収に向け、新たな一歩が踏み出されたことになります。

こちら、国内記事も多数出ています。

LINK: 米通信大手AT&Tのタイムワーナー買収承認 連邦地裁: 日本経済新聞

LINK: AT&TのTW買収実現に向け前進-米判事が司法省の訴え退ける – Bloomberg

LINK: 米地裁、AT&Tのタイム・ワーナー850億ドル買収を承認 | ロイター

その背景まで含めたロイター記事に詳しいですが、実はこれ、ディズニーにも大きな影響を与えています。

21世紀フォックスの買収にコムキャストが再び名乗り、650億ドルのキャッシュで

2017年12月、ディズニーが21世紀フォックスの買収を発表したことを覚えていますでしょうか。

ウォルト・ディズニー、21世紀フォックスを524億ドルで買収へ、ボブ・アイガーCEOは2021年まで続投へ(update)

実はこの段階では、ディズニーと21世紀フォックスとの間で524億ドルの株式交換による買収交渉がまとまった、というのみで、実際の合併までには超大型、垂直統合がはたして反トラスト法に違反しないかという懸念もありました。しかし今回のAT&T/タイムワーナーの買収が正式に承認されたことで、このようなタイプの(同業他社買収ではなくサプライチェーンの補完となる)買収も大きく道が開けたといえます。

ところが、ここに新たにケーブルテレビ/通信大手のコムキャストが再び名乗りを上げます。今回コムキャストは21世紀フォックスに対し、ディズニーの提示額を大きく上回る650億ドルの“キャッシュ”を用意するという提案を行いました。2017年12月の段階で手を引いた理由が、まさに上記AT&Tによる買収が司法省により却下されると読んでいたためで、その懸念がなくなったことで、再びコムキャストが名乗りを上げた、というのがその流れです。

LINK: Comcast bids $65 billion for most of 21st Century Fox in challenge to Disney

LINK: 米コムキャストが21世紀フォックスに買収提案-ディズニーに対抗 – Bloomberg

LINK: コムキャスト、21世紀フォックス買収正式提案 (写真=ロイター) :日本経済新聞

LINK: フォックスの事業、7.2兆円で買収提案 コムキャスト:朝日新聞デジタル

コムキャスト/ディズニーの狙いは?

実は以前の記事ではあんまり深く掘れなかったのですが、その後識者から教えていただいた情報をアップデートしておきます。

ディズニー、そしてコムキャストが21世紀フォックスを狙う理由は、なにもフォックスが持つIPだけではありません。むしろIP自体はほとんど他の企業に持っていかれているという状況で、確かにX-MENなどの権利はあるものの、多くの専門家はそこにはメリットを見いだしていません。

実は、21世紀フォックスがもつ重要なアセットとは、インターネット上で動画配信を行うプラットフォーム、Huluの権利です。日本でもHuluはサービスインしているものの、日本のhuluは実質日本テレビのサービスで、本国Huluはハリウッド企業が出資し合って作られた、ハリウッドのサービスです。既にディズニーもHuluには資本参加しているものの、21世紀フォックスが持つ株式と合わせることで、より大きな影響力を得ることができます。

しかしそれはコムキャストも同じこと。コムキャストはユニバーサルスタジオを傘下にしており、コンテンツ&通信/配信の優位性を保つためには、Hulu、ひいては21世紀フォックスの買収が必要となります。

そのため、コムキャストは大きく金額をつり上げてきました。ディズニーはどうでるか、大変楽しみです。

ディズニーは自社でも配信プラットフォームを持つオプションを用意している?

ディズニーは2017年8月、これまで蜜月の関係にあったNetflixを切るという宣言をしています。

BAMTechにさらなる出資、Netflixとの契約は終了——ディズニー社FY2017Q3決算発表

この後に21世紀フォックスの買収提案があったので、さもありなんといったところですが、上記のようにBAMtechという、配信に特化した企業を持っていることがある意味保険になっているのかと思っていました。

が、ちょっと気になるのは、2018年3月14日に公開されたこの組織変更のリリース。

LINK: The Walt Disney Company Announces Strategic Reorganization – The Walt Disney Company

ここでは、このような文言があります。

The Disney-branded direct-to-consumer streaming service, which will launch in late 2019 and has yet to be named, will be the exclusive home for subscription video-on-demand viewing of the newest live-action and animated movies in the Pay TV window from Disney, Pixar, Marvel and Lucasfilm. It will also feature an impressive array of original and exclusive series and movie programming, along with thousands of titles from the Disney film and television libraries. Senior Vice President Agnes Chu will move to the Direct-to-Consumer and International segment and will continue to oversee programming for the upcoming Disney-branded streaming service.

今回の組織再編で新たに登場した「Direct-to-Consumer Services」部門は、ディズニーが持つスタジオ、アニメ、ピクサー、マーベル、ルーカスフィルムなどのコンテンツを“直接”配信するサービスを2019年末にリリースするとしています。これはHuluが買収できた話とは全く別に動いているもので、おそらく21世紀フォックスの買収とは無関係に配信サービスを自社内で立ち上げる用意もしています。これを考えると、Huluがそこまで必須のサービスなのか、というのは疑問です。

もちろん、ディズニー社にとってはもう1つの大きな「ボブ・アイガー後継問題」も抱えていて、21世紀フォックスの買収は要するに「マードックの血筋をディズニーに入れる」ともとらえられます。今回のAT&Tの勝訴は、実はアメリカエンターテイメント界にも大きな光、もしくは影を落とす大事件だったわけです。

広義のディズニーウォッチ、ほんと面白いよね。