シンガポールを母港に、ディズニー・クルーズラインがアジアに来る!(2023/03/30)

「Eastern Gateway Project」消滅でディズニーランド・リゾートが失ったもの(Update)

mtakeshiの雑記カリフォルニア ディズニーランド・リゾート

先日発表のあった、カリフォルニアのディズニーランド・リゾートにおける新ホテル&駐車場建設の報に対する雑感です。

ディズニーランド・リゾート第4の“4ダイアモンド級ホテル”正式発表、ダウンタウンディズニーは縮小(Update)
2016年6月に初報のあった新ホテルが、とうとう正式に発表されました。LINK: New Hotel Coming to the Disneyland Resort in 2021 | Disney Parks Blog

TL;DR (Too long; didn’t read.)

ディズニーのパーク&リゾート部門は、Eastern Gateway Projectをあきらめることでアナハイム市に対してなんとか体面を取り繕うことができたが、長期的に見てそれが正しい選択だったとは限らないのではないか?

過去にこれほど“ウォルトの意思”を感じられた計画もないだろうに……。

新ホテル登場、しかしその裏で……

先日お伝えした、ディズニーランド・リゾートに新たなホテルを建設&駐車場を建設というニュースはかなり大きなものでした。現在のダウンタウン・ディズニー西端のAMCシアターやESPN、アール・オブ・サンドイッチが存在するエリアがなくなり、モノレールのステーションとディズニーランドホテルの間に高級ホテルを作るというもの。これ自体は大変楽しみではあります。

しかし、これと同時に発表されたのは、現在のディズニーランドホテル北側の駐車場エリアを立体化し、新たな駐車場エリアを整備するというもの。こちらが問題です。

実はディズニーランド・リゾートと東京ディズニーリゾートは大変よく似ていて、どちらも「拡張用地がない」ことが共通しています。むしろディズニーランド・リゾートのほうが用地に苦労していて、その中で2019年夏にむけ、新たなエリア「Star Wars: Galaxy’s Edge」オープンという一大イベントが起きています。東京ディズニーランドと同様、大規模エリア拡張のため現在のエリアがきゅうきゅうになっているというのが、2017年後半の状況です。

その結果、ハロウィーン期間は通常ディズニーランド側のみで開催だったものを、カーズランドを含むディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー側にその要素を振り、混雑度を平準化する動きがあっただけでなく、2018年以降は定期的に開催されていた「runDisney」を中止する必要すら出てきてしまいました。

LINK: RunDisney

LINK: Disneyland half marathon officially cancelled, along with other runDisney races, in 2018 – Orange County Register

それどころか、2019年にはオープンするその「Star Wars: Galaxy’s Edge」の需要増に対して、ディズニーランド・リゾートでは駐車場が足りない状況になることが明らかです。

複数の問題を1つのアイデアで解決する「Eastern Gateway Project」

そこで突然出てきたのが、駐車場問題をクリアにするだけでなく、過去60年以上にわたりディズニーランド・リゾートを苦しめてきた、ある問題に対する回答にもなりうるとんでもないプロジェクトです。それが「Eastern Gateway Project」。

新たな駐車場とハブでディズニーランドの動線が変わる——「Eastern Gateway Project」が明らかに(Update)
今日は大ニュースが多い!その中でも最注目はこれ。Paint the Night復活とかの話題がすっ飛びました。

これはディズニーランド・リゾートの東側、オフィシャルホテル群とは逆側の、比較的安いグレードのホテル群が並ぶエリアのさらに東側(裏手側)にある土地に、あらたな階層型駐車場を作り、そこを拠点にするというもの。

この計画では、オフィシャルホテル群に宿泊していないゲストに対し、これまで開かれていた東側のバスエリア側入り口をEastern Gateway側に遠回りさせるというルートに変更されることが一番のポイントになっています。つまり、パークへの入り口ががらりと変わり、オフィシャルホテル群以外の利便性を一様に下げるということになりえます(それがディズニー側の狙いかどうかは定かではないですが)。

これが実現すると、すべてのゲストはぐるりと回って、ホテル群裏手のセキュリティチェックエリアを通り、歩道橋を渡ってパークエリアに入ることになります。その歩道橋に上がる階段などはないため、これまで5分で入れた場所のホテルが20分以上かかるのではないかと思います。

本来はこの辺から、Eastern Gatewayに向かうはずだったが……。

大きすぎる野望の反発

これに反発したのは、これまでパークに最も近い場所にあるホテルのオーナーたちです。Eastern Gateway Projectではホテルの順列が大きく変わるため、ハーバー・ブルバード沿いのホテル群がこの計画に反対をとなえ、団結していました。まあそらそうだ案件。

DLRのEastern Gateway Projectに“No”——反対派によるWebサイトが登場
ハーバー・ブルバード沿いでビジネスを行う店舗が中心となり、反対派連合がとうとう結成されました。LINK: Harbor Boulevard merchants create website to voice concerns on

で、2017年1月のこの報道以降、Eastern Gateway Projectはぱたりと話題に上がらなくなります。そしてやっと出てきた続報が、新規ホテルの詳細と新駐車場の建設です。

ディズニーランド・リゾート第4の“4ダイアモンド級ホテル”正式発表、ダウンタウンディズニーは縮小(Update)
2016年6月に初報のあった新ホテルが、とうとう正式に発表されました。LINK: New Hotel Coming to the Disneyland Resort in 2021 | Disney Parks Blog

規模的に収容台数は6800台→6500台になりました。しかしこれはつまり、Eastern Gateway Projectの「消滅」を意味するでしょう。本来Eastern Gateway Projectで確保すべき駐車場は、西側のエリア(ディズニーランドホテル北側)に作られることになり、当然東側ゲートも手を加えられることなく、そのままになるのではないかと思います。

Eastern Gateway Project消滅でディズニーランド・リゾートが得たものと失ったもの

実はこのEastern Gateway Project、ディズニー社としてはいくつかの意味がありました。まずひとつは、この建設による雇用の確保を条件に、アナハイム市から減税措置(具体的にはチケットにかかる税金)を得られていたこと。これは以前のアナハイム市公聴会から明らかになっています。

アナハイム市議会、ディズニーへの税制優遇措置の拡張を決定――ディズニーランド・リゾートへさらなる投資が
盛り上がってまいりました。

細かな条件は明らかになっていませんが、もともとのEastern Gateway Projectの着工は2017年末(つまり、ちょうど今の時期)。それが条件になっているため、ディズニーはなんとしてでも「着工」しなくてはなりませんでした。

ところが、地元のホテルとの衝突が発生し、本来の建設計画は遅れに遅れました。当初の話では2017年5月時点で、最初の兆候である「モノレールのルート変更」が計画されていましたが、これもキャンセルになっています(つまりこの時点で今回の計画が頓挫していた、とも言えます)。これが計画変更で(ギリギリ)得られたものです。

【dp!】DL東ゲート計画に暗雲か/公式アカウントハッキングされる?/ジョー・ロードがPandoraに込めたストーリー ほか|2017年5月10日
2017年5月10日のdp!ニュースです。

そして失ったもの。それはまず「ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーの拡張」。Eastern Gateway Projectは現在のバスターミナルを別の場所に移動させ、パークに接する土地を生み出します。そのため、本来は現在のバスターミナル、および死に体のハリウッドエリアをまとめて再開発できる可能性がありました。

ここにできるものはなんだったのか?それはパーク&リゾートのチェアマン、ボブ・チェイペックが発言した、「Guardians of the Galaxy – Mission Breakout!オープンは始まりに過ぎない」というコメントから想像がつくと思います。

【dp!】マーベル“テーマパーク”ユニバース?/ニモをスマホで探そう/Irregular Choiceのミッキーコレクション ほか|2017年6月1日
2017年6月1日のdp!ニュースです。

失ったもののもう1つは、「ディズニーランド・リゾートをウォルトが夢みた“リゾート”にする」こと。ウォルトの伝記を読んだ方ならば、ディズニーランドの“失敗”として、回りに安モーテルを作られてしまい、体験価値を損ねてしまったということが表現されているのを覚えているかと思います。その反動から、ホテルステイを含めたリゾート体験ができる広大な場所として、フロリダ州オーランドに新たに「ディズニー・ワールド」(後のウォルト・ディズニー・ワールド)計画につながるわけです。

今回のEastern Gateway Projectは、ホテルステイの価値を(相対的に)アップし、ディズニーランド・リゾートにおいても直営ホテルに泊まるべき理由を作り出しました。が、今回の計画断念で、数十年単位でそれが後退するのではないかと考えています。

まあ考えようによってはいままで通り安価にステイできるからいいじゃんという気もすごくしますけれど、個人的にはやっぱりウォルト・ディズニー・ワールドのリゾート観というのがとても、とても好きで、これと同じ空気が本家アナハイムでも実現できたかもしれない……と考えると、今回のお話は短期的にはプラスでも、長期的にはマイナスなんじゃないかな……とか思ってしまうわけです。

知らんけど。

追記:2018年8月29日

2018年8月15日、ディズニーは第4のホテルプロジェクトを「無期延期」としました。発端はこの「駐車場」の位置。

ディズニーランド・リゾート「第4のホテル」計画が無期延期→完全中止へ、ディズニーとアナハイム市の確執深く(Update)
いやー、いろいろと動きました。
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