BAMTechにさらなる出資、Netflixとの契約は終了——ディズニー社FY2017Q3決算発表

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ウォルト・ディズニー社がFY2017Q3の決算発表を行いました。メディア↓、スタジオ↓、パーク&リゾート↑、コンシューマープロダクト↑。ESPNの減収に歯止めをかけるべく、新たな施策を発表しています。

LINK: The Walt Disney Company Reports Third Quarter And Nine Months Earnings For Fiscal 2017 – The Walt Disney Company

ウォルト・ディズニー社は2017年8月8日、同社の2017年第三四半期(2017年4月2日〜7月1日)の決算発表を行いました。4−6月期の売上高は142億3800万ドルで前年同期比でほぼ横ばいです。中でもメディアネットワーク部門の利益のうち、ケーブルネットワークは14億6200万ドルとマイナス23%で大きく落ち込んでおり、この主要因はスポーツニュースを配信するESPN契約数の落ち込みだとしています。

その他ではパーク&リゾート部門の利益が11億6800万ドルで前年同期比プラス18%と好調。これは上海ディズニーランドやディズニーランド・パリ25周年の好調に加え、イースターホリデーの客足が良かったということが要因とのこと。特に上海ディズニーランド分がまるまる上乗せされていることが主要因のようですね(前年同期は1カ月分しか入っていない)。今期の要因として、ディズニー・ファンタジー(クルーズライン)がドック入りしていることも記載されています。

スタジオ部門はマイナス17%でした。スタジオに関しては公開作品が前年度よりも少ないことが原因かと思われます(2017年度第三四半期は「パイレーツ5」「カーズ3」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2」、2016年度第三四半期は「The BFG」「ファインディング・ドリー」「アリス2」「シビル・ウォー」「ジャングル・ブック」)。また、前年度には「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」のソフト販売にくらべ、「ローグ・ワン」の売上が低かったということも要因のようです。

コンシューマープロダクト&インタラクティブメディアはプラス12%。これはライセンスビジネスとゲームビジネスが好調だったことが要因としています。

BAMTechの出資比率をアップ、Netflixとの契約は終了

そして大きな発表は、ディズニーにおけるネットストリーミングビジネスの転換です。まず、今回の決算発表にて、これまでも出資を行っていたストリーミングビジネスの企業、BAMTechにさらなる出資を行い、新たに42%の株式を取得すると発表されました。

LINK: The Walt Disney Company to Acquire Majority Ownership of BAMTech – The Walt Disney Company

BAMTechについては、こちらの記事もどうぞ(2016年10月の記事)。

LINK: ディズニーがMLBのストリーミング中継ビジネスに10億ドルを投資 | TechCrunch Japan

BAMTechはもともとMLB(メジャーリーグ)のストリーミング会社ですが、野球以外にもスポーツ系のニュースを配信していました。これまでも10億ドルで株式の33%を取得していましたが、今回のさらなる出資で持株比率を75%まで引き上げます。

そして、これまで行ってきた、Netflixへのディズニー作品提供を現契約にて終了し、ディズニーは新たなストリーミングサービスを2019年にディズニーブランドにて発足、提供させるとコメントしました。これにより、(アメリカの)Netflixにおけるディズニー作品2018年末をもって終了します(2019年以降の新作映画の配信がなくなります)。ただしこれはあくまでディズニーの映画の契約で、abcなどのテレビコンテンツは別のようです。

LINK: ディズニー、2019年に独自ストリーミングサービスを開始――Netflixからは引き揚げ | TechCrunch Japan

Netflixは「ミラーワールド」を買収

そしてこの直前に流れてきた興味深いニュースも。Netflixは2017年8月7日に、コミック出版社のMillarworldを買収したと発表しています。このMillarworldは、「キック・アス」や「キングスマン」の原作コミックを出していたところで、コミック作家のマーク・ミラー氏が創設した企業。元マーベルの人で、シビル・ウォーやオールドマン・ローガンなどを手掛けていたとのことです。

LINK: Netflixの初買収は「キック・アス」原作コミック出版社Millarworld – ITmedia NEWS

LINK: Netflixの初の買収相手はコミックス出版のMillarworldーー作家も一緒に | TechCrunch Japan

ディズニーとNetflixというと、マーベル・シネマティック・ユニバースの「ザ・ディフェンダーズ」シリーズ(デアデビル、ジェシカ・ジョーンズ、ルーク・ケイジ、アイアンフィスト)なども展開していて、この関係がどうなるかというのも大変気になります(多分継続だと思うけれど)。

LINK: Marvel ザ・ディフェンダーズ | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

ディズニーと「ストリーミング」

さて、実はこのディズニーが映画をストリーミングする、というのはかなり長い歴史がありまして、これを踏まえるとなかなか興味深いことが分かります。

まず、最初に動きがあったのは、Blu-rayからネットに切り替わるあたり。もともとディズニー内部では、ものとしての円盤ではなく「映画を見る権利」を管理するという、「デジタルライツ・ロッカー」の実現を考えていました。ディズニー以外の仕組みとしては、ワーナーなどが展開していた「Ultra Violet」が存在しており、それに似たような仕組みとして「Disney Studio All Access」を検討していたと言われています(KeyChestとも呼ばれていました)。

結果としてサービスとして出てきたのは、アメリカにおいては「Disney Movies Anywhere」です。これはAmazonやiTunes、Google Playなどで購入したディズニー映画の権利を集約し、アプリから映画が見られるというもの。モノとしてのBlu-rayにもコードが封入され、オンラインストリーミングでも見られるという仕組みでした。一応これは自社でシステムを組んでいます。

米ディズニー、クラウドベースの映画配信「Disney Movies Anywhere」をスタート
日本における「MovieNEX」と同様のサービスが登場しました。日本からの利用はできません。 LINK:ディズニー、iTunes利用のクラ...

そして同時期、日本においては「MovieNEX」という仕組みが登場します。これは従来Blu-ray、DVD、デジタル配信と分かれていた販売経路を1つのパッケージに集約、どれを選ぶか分からないということをなくすために作られたとされていました(現状は初回版とかおまけ付きとか大量に出ていて当初の目的はなくなっていますが)。デジタル配信のライツマネジメントというよりは、Blu-rayを中心としたモノとしての販売方法で、Disney Movies Anywhereとは似てますが方針が異なると思っています。

LINK: ディズニーはもう単なるブルーレイを発売しない――新形態「MovieNEX」とは何か? (1/3) – ITmedia ビジネスオンライン

MovieNEXはデジタル配信/ストリーミング部分において、ニコニコ動画、Google(YouTube)とパートナーを組み、配信プラットフォームを借りる形で展開しています。後にbonoboというサービスが追加されましたが、2017年6月に撤退しています。

MovieNEXのデジタルダウンロードを配信していたパケットビデオの「bonobo」が2017年6月30日にサービス終了(update)
追記:正式発表に伴い、追記およびタイトルを変更しました。 それは……ないぜ……。 LINK: 人に話したくなる映画と出会える「bonob...

今回のBAMTechへの出資、および自社での配信プラットフォーム展開はこのような流れの後に決まったことと考えると、やはり他社と手を組むのではなく、これこそがビジネスの柱になると考えたのでしょう。以前よりディズニーによるNetflix買収の噂もありましたが、買収するのではなく自社で作る、という決意になったようですね(Netflix、ディズニーともに株価は時間外で下落しています)。

そうなると、完全に外部のプラットフォームに依存した「MovieNEX」もあまりいい手だとは思えません。このあたりに関しては当時のゼネラルマネージャー、塚越隆行氏にインタビューしたときに、かなり日本における裁量権がある(正確にはウォルト・ディズニー・ジャパンが日本の市場動向をきっちり本国にレポートしている)との話で、世界で横並びにするような動き方はしない会社であると聞きました。実際、マーベルおよびスター・ウォーズの独立チャンネルが噂されていましたし、すでにヨーロッパ圏ではDisney Movies AnywhereでもMovieNEXでもない映画配信サービスがスタートしています。

LINK: ディズニー、マーベルとスターウォーズの専用購読サービスを検討中 | TechCrunch Japan

米ディズニー、イギリスにてサブスクリプション型ネット配信サービス「DisneyLife」を2015年11月にスタート(update)
来た。これはでかいかも。

ともあれ、Netflixとディズニーの契約に陰りが出たというのは事実。ちょっとここの部分は気になりますね。2019年にどんなサービスを展開するか注視したいと思います。

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