上海ディズニーリゾート滞在で考えたことを、ねとらぼに掲載していただきました。
東京となにが同じで、なにが違う?
「上海ディズニーリゾート」リポート 上海で見つけた、ディズニーが「夢はかなう」と言える理由 – ねとらぼ https://t.co/w0ApZQhg9i @itm_nlabから pic.twitter.com/iQzn7SPYBV
— ねとらぼ (@itm_nlab) June 21, 2016
ということでぜひ、ねとらぼに寄稿した記事をどうぞ。当社比むちゃくちゃ濃ゆい内容になってしまいましたが、そこでは書けなかったことをフォローアップします。
私がディズニー関連の(浅い)トリビアを好まない理由
いつもの超変化球から入ります。
Twitterのプロフィールなどで「ゴシップとトリビア抜きの」という表現をしています。これはどうしてもディズニーというとトリビア情報が先行しており、それはもう私の役割ではないというのと、そもそもブログ/ニュースと相性が悪い(Twitter140文字で事足りる)こと、そして裏が全く取れないということが理由です。トリビア関連の情報をまとめる人で、その出どころ(イマジニア)までたどれるのってまずないですよね。D23 Expo情報くらいしか。
そしてもう1つ、トリビアの堀りかたがどうしても「浅い」ものになってしまうから。例えば一番分かりやすい「隠れミッキー」を例に出します。ほとんどのトリビアネタとしては「ここに隠れミッキーがあります。みんな探してみてね!」で終わっちゃいます。私がほしい情報は、なぜそこに隠れミッキーがあるのか、隠れミッキーを隠している理由は何か、イマジニアがそうした理由は何なのか、ということです。そこまで掘って初めてトリビア情報だと、私は考えています。
これは伝聞なのですが、実際に東京ディズニーシー、マーメイド・ラグーンには「ヘルメットをかぶったヒトデ」がいるそうです。たった一体だけ、なぜかヘルメットをかぶっているという時点で満足するというのも1つ情報消費の仕方としてはアリです。しかし、このヒトデにはとあるストーリーが秘められていて、それはイマジニアだけが知っている内容だとのことです。実は私はいまだにそのヒトデの場所が分からず、先日初めてTwitterで流れてきたのを見て、あるイマジニアに思いをはせることができました。
同様のパークトリビアとして、例えば「マジック・キングダム型のパークは中央にお城がある、それはどこにいてもお城の位置で自分がどこにいるかを把握できるため」「中央には“ハブ”がある。一度ここにゲストが集まり、四方にあるテーマランドに移動させるため」「入り口からお城にはメインストリートがある、それは古き良きアメリカの時代へ旅してもらうため」といった、マジック・キングダムの黄金律が存在していました。いました、というのは、それが上海ディズニーランドにて脱構築されたからです。
上海ディズニーランドを見て思ったのは、イマジニアはウォルトの遺産である「ディズニーランド」で侵してはならない黄金律を、見たままに解釈するのではなく、「いったいなぜそうしているのか?」を数回まわし、本当に必要なことを取り出す作業から始めたのではないか——ということです。ハブがあることが重要なのではない、動線を確保することが重要なのでは?メインストリートがあることが重要なのではない、お城までのワクワク感があればいいのでは? まさに、「ティーカップに山を入れる」作業です。その結果、見た目は大きく違えど、1955年に作られた黄金律を脱構築した、最新のマジック・キングダムが上海に完成しました。
ウォルト亡きいまも、その信念はイマジニアたちによって育てられ、伝統をぶっこわし、新たな伝統を作るということをとうとう上海でやってのけました。これはパリ、香港ではできなかったこと。おそらく現マジック・キングダム1.0の完成形は東京ディズニーランド。そのハブを構成するタワーなどはいったんの完成形だったウォルト・ディズニー・ワールド版にフィードバックされました。そして2020年をめどに、1.0の完成形としての新たな再構築を計画しています。これはこれですごいこと。
そして、これまでの継ぎ足しではなく、まさに「ブルースカイ」の状態から作られた上海ディズニーランドの今後の発展は、ディズニーウォッチャーとして大変期待しています。
荷物検査エリア完備、広いパレードルートには後ろには広い動線を確保、プロジェクションショー前提とした横に広い城、クラシックアトラクションへの心憎いまでのオマージュ、中国への印象を変えかねない完璧なキャスト教育…。アイガー率いるいまのディズニーが作るモダンスタイルなパークでした。
— dpost.jp / ディーポスト・ジェイピー (@dpostjp) June 16, 2016
東京ディズニーランドは一つの完成型だったんだろうけど、パレードやショー演出の多様化をいまの型のまま対応しても効果が薄いのでは。そういう意味では上海ディズニーランドはまさに「型破り」。ハブがないとかメインストリートがないよりも、パレードルートに動線確保とかのメリットに注目したい。
— dpost.jp / ディーポスト・ジェイピー (@dpostjp) June 17, 2016

カリブの海賊に見るイマジニアの方向転換
若干スコープを狭めて、今度はアトラクションに行きましょう。やはり注目すべきは「Pirates of the Caribbean:Battle for the Sunken Treasure」、上海版カリブの海賊です。
ここで思い出してほしいのは、ウォルト・ディズニー・ワールド、ディズニー・ハリウッドスタジオにて短期間運営されていたアトラクション「The Legend of Captain Jack Sparrow」です。

2012年12月にオープンしたこのアトラクションは、固定セットにハーフミラーのスクリーンを用い、そこに映像としてジャック・スパロウを投影、ディズニーが言うところの「Dynamic Environment」を多用した、新世代型のアトラクションでした。
Dynamic Environmentについてはこちらの記事をどうぞ。要するにプロジェクションマッピングです。

正直「The Legend of Captain Jack Sparrow」はアトラクションとしては何も面白みがありませんでした(苦笑)が、このアトラクションこそ「上海ディズニーランドのテストケースだったのでは?」と当時から言われていました。実際その読みは大当たりで、上海版カリブの海賊にはこの技術がふんだんに使われていました。
逆に、大幅に縮小されたものがあります。それは「オーディオアニマトロニクス」。数えてみるとオーディオアニマトロニクスと呼べるものは、上海版カリブの海賊には片手にあまるほどしかありません。これだけを聞くとかなり衝撃でしょう。ディズニーのアトラクションを構成する大きな要素こそ、オーディオアニマトロニクスだったのですから。
しかし、イマジニアはおそらくここで大きな転換を考えたのでしょう。オーディオアニマトロニクスを使うことが目的なのではなく、ゲストに新鮮な驚きを提供することこそが、イマジニアの仕事。おそらく、カリブの海賊上海版を体験した人は、オーディオアニマトロニクスがどのくらいあったのかを覚えていないのではないでしょうか。手段と目的をきっちり把握していたのはイマジニアの方で、ゲスト(というかマニア)のほうが頭が固くなってしまっているのかもしれませんね。
そしてボートライドの構造。何度もdpost.jpで取り上げていた特許を基にしたものが実現されていました。これだけでも感涙ものです。


この構造は大変興味深いものでした。例えるならば、これは「トラックレスライド」の文脈で考えるといいでしょう。東京ディズニーシー「アクアトピア」や東京ディズニーランド「プーさんのハニーハント」などの構造です。トラックレスライドの本質は「ライドがどこに向かうのか分からない」というもの。それが実現できれば、実際に「トラック」があっても問題ありません。そういう意味ではジャングルクルーズなども一緒なのですが、上海版カリブの海賊では「向き」「スピード」が可変で、その点でも大きく体験価値が上がっています。
ライドの動きについては、向きが変わる、後ろに動くなどの前情報は知っていたものの、正直その体験は驚くべきものでした。これだけでも、上海に行った価値が十分ありました。
パイレーツ・オブ・カリビアン上海版体験した!まごうことなきカリブの海賊であり、ディズニーのイマジニアが持てる演出をガッツリ組み込んだ恐ろしいライド。これはネタバレ一切なしに体験できてよかった!!すごかった。すごかった。すごかった。
— dpost.jp / ディーポスト・ジェイピー (@dpostjp) June 16, 2016
すっごい楽しい。イマジニアすごい。技術のディズニー。本気で夢を技術で実現しようとしてる。ディズニーがいう「夢は叶う」とはこういうことなんだな…。
— dpost.jp / ディーポスト・ジェイピー (@dpostjp) June 16, 2016
夢は叶うんじゃねえ、技術と情熱を持って叶えるんだよ!ありがとうイマジニアの皆さん。そしてありがとうトム・スタッグス。あなたのこれからの活躍を楽しみにしてます。
— dpost.jp / ディーポスト・ジェイピー (@dpostjp) June 16, 2016
上海ディズニーランドから分かるディズニーテーマパークの過去と未来
さて、答え合わせの時間です。

帰国後振り返って上記の2013年11月時点の流出リストを見たんですが、これがまあホントに的中率高かったんですわ。ということでこのリストは間違いなく「本物」。ただし、1つ大きな違いがあります。それは「トイ・ストーリー・ランド」が存在していたこと。おそらく流出したのはかなり前の段階で、その後どこかのタイミングでまるまるカットされたのでしょうね…。
いまのところ、アドベンチャー・アイルの空き地に「Expedition Everest」ができるのでは、という図が出ているので、確かに若干たりないE-Ticketライドの増強としてはなかなか良さそうですね。
そしてもう1つ。この話も上海ディズニーリゾートに行って「こりゃ真実だな」と思った件。

現在ディズニーランド・リゾートとウォルト・ディズニー・ワールドに作られている、スター・ウォーズ関連エリアのアトラクションの1つが「ボートライドになる」というイマジニアの発言で大変な衝撃がありました。が、これは間違いなく「上海版カリブの海賊」の技術が転用されて作られる、と確信。事実、2015年末にabcで放送された、ハリソン・フォードが紹介した新アトラクションのプレビュー動画は「ライドに乗りながら横に視線が動く」という映像で、どうやらライドがドリフト的な動きをしていました。ボートライドといっても水流で動くのではなく、水の上を加速、回転しながら動くというものになっているのではないかと思うと、こちらもオープンがとても楽しみですね。
「マジック・キングダム2.0」のプロトタイプ vs 「マジック・キングダム1.0」の究極型
ということで、上海はまさに「2.0」世代のトップランナー。個人的にはこの2.0世代は「第二パークを作るのか」それとも「パークを拡張し続けるのか」という点ですごく気になってます。用地の位置を見る限りやっぱり第二パーク、第三パークだとは思うのですが、1つのパークを拡張するということもやってやれないことはないですからね。
そして気になるのはわれらが東京ディズニーランド。正直、上海の方たちが上海パークを体験したうえで楽しめるパークになり得るのか、というのは大変気になります。現在発表されている2020年までのアトラクションリストを見ても、今回のような上海版カリブに匹敵する技術を持つものがなさそうなのが大変気になります。
実はその他のアトラクションもすごく良かったんですよ。ピーターパンやバズは技術的にも正常進化していますし、キャッスル内部のアトラクション2つはピリリと新技術がはいっていてとても良かった。あと4年で何か動きがあって、世界がうらやむアトラクションが東京にできてくれるといいんですけどね…これはねとらぼにはかけなかった。
ピーターパンに乗った。まったく同じ!まったく違う!!しかもパリの「Disney Dreams!」の旋律を入れてる。びっくりした!Old but coolだわ。
— dpost.jp / ディーポスト・ジェイピー (@dpostjp) June 16, 2016
トロン乗った。これはすごい。乗ってる間ずっと笑ってた。トロン3作ろう。絶対作ろう。最高だ! pic.twitter.com/RqklgVBb2P
— dpost.jp / ディーポスト・ジェイピー (@dpostjp) June 16, 2016
Voyage to the crystal grotto乗った。上海キャッスルのストーリーの根幹がこのアトラクションにあった。これもアナハイムのストーリーブックランド・キャナルボートの正常進化版だ。 pic.twitter.com/yGF7AWZ64z
— dpost.jp / ディーポスト・ジェイピー (@dpostjp) June 17, 2016
Roaring Rapidsは水流版のセンター・オブ・ジ・アース。乗り降りの処理がまだなれてないのか、回転率は悪いです。内容は想像通りといったところでしょうか。巨大なオーディオアニマトロニクスは動いているだけで感謝(エベレスト脳)。
— dpost.jp / ディーポスト・ジェイピー (@dpostjp) June 17, 2016
Buzz Lightyear Planet Rescueを体験した。一段技術の上がったバズ。やはり光線銃の照準が常に見えてるのは体験としては楽しい。
— dpost.jp / ディーポスト・ジェイピー (@dpostjp) June 17, 2016
Soaring over the Horizonに乗った!これまた既存ソアリンの正常進化。こんなテーマでソアリンを作れるのか!という驚き。ラストのシーン以外はUSパークも一緒なのかなあ。世界を巡る旅はとてもいいんだけれど、個人的には禁じ手を使ってしまったようでちょっとだけ残念だ。
— dpost.jp / ディーポスト・ジェイピー (@dpostjp) June 17, 2016
ともあれ、東京拡張計画は上海の体験から考えたら、もう一回くらいひっくり返してもいいと思ってます。1.0世代の究極形態として自慢できるパーク。ただ、「初めてのパークが上海」という世代もすぐにやってきます。そのとき、どのような新技術が東京にやってきてくれるのか——とても楽しみですね。
ということで、ねとらぼ記事をぜひよろしくお願いいたします。
LINK東京となにが同じで、なにが違う?:「上海ディズニーリゾート」リポート 上海で見つけた、ディズニーが「夢はかなう」と言える理由 (1/5) – ねとらぼ
下記の記事もあわせてどうぞ。直前に作った記事が現地で最高に役に立ちました。あとで現物写真へのリンクも埋め込んでおこうかな。なお、これらの展示物は現在EPCOTの中国館にてほぼそのまま展示されているそうです。



連載:「上海ディズニーリゾートをD23 Expo 2015ブースから見る」






PHOTOS: ‘Inside Shanghai Disney Resort’ exhibit opens in the China Pavilion at Epcot – https://t.co/va7ispjes1 pic.twitter.com/MYpOc0THGi
— Inside the Magic (@InsideTheMagic) June 20, 2016