2016年春、あの「オリエンタルランド社5000億投資」はどうなったのかを外部要因から考える

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株主総会前に書かなくてはならないと思っていた件。

2014年4月28日、オリエンタルランド社は2014年度からの3カ年の経営方針を決める「2016中期経営計画」を発表しました。ここには10年...
update: 2016年4月27日、新たな開発概要が発表されました。 とうとう「5000億」の具体的な方向性が発表されました。...
update: 2016年4月27日、新たな開発概要が発表されました。 正式な発表がありました。

読者の方の中にも、オリエンタルランドが2014年4月に発表した、2024年度までに5000億円レベルを投資という「2016中期経営計画」のその後がどうなったのか、心配している方も多いでしょう。この前ちょこっとこの私見をお話したところ、かなり驚かれた&納得したという方もいたので、どこかのタイミングで書こうと思っていたことを。

まずその歴史から。上にdpost.jpにおける関連記事で流れを書きました。まずは2014年4月、「2016中期経営計画」において、5000億円レベルの投資(既存施設の更新含め)を発表しました。2014年10月にはその投資がファンタジーランドの再開発、および新テーマポートの追加であることが発表され、2015年4月にはその詳細が発表されました。

ところが、2015年10月末にその計画に「見直し」が行われるということが2016年3月期第2四半期決算発表内にて触れられ、2015年末にはその内容を発表するとしたにもかかわらず、2015年末に再度「今後の開発構想」検討期間を延長するとの発表がありました。

また、プレスリリース以外にも、雑誌「財界」2016年1月12日号の座談会(2015年11月25日開催)において、オリエンタルランド社CEOの加賀見俊夫氏が「規模は小さいですが、どういうものを造るのか、今後1年半位をかけてコンセプトを詰めていきたいと思っています」と発言しているという重要情報がありました。

ここだけを見ると、オリエンタルランドは投資を先送りし、拡張/再開発をなきものにしようとしている、東京ディズニーランドのキャパシティが広がらないと混雑したままだ――と、不満だけが募ると思います。そして財界座談会における発言で、2015年11月末時点で「1年半かけてコンセプトを」という、大変不穏なコメントが気になっていました。その一文にはさらに「規模は小さいですが」という言葉もあり、当初発表のファンタジーランド再開発およびアナと雪の女王 北欧をテーマにした新テーマポートは決して規模の小さくないものだっただけに、いったい何が行われているのかが分からない状態が続いています。

ヒントは鉄道博物館にあった

ヒントどころか、多分これが答えだと私は思っています。

LINK 鉄道博物館 – THE RAILWAY MUSEUM –

LINK 2017年秋、鉄道博物館が生まれ変わります (2014年11月15日)

2014年11月、鉄道博物館が新館の増設を発表し、2017年秋に1.5倍の広さに増床するという発表がありました。個人的にも大好きな博物館であるので、いったい何が展示されるのかを考えるとワクワクするニュースでした。

ところが、です。2016年2月に衝撃のニュースが入ってきます。

LINK 鉄道博物館本館リニューアル及び新館建設計画の変更について(2016年2月19日)

その増床計画が変更となり、建物の縮小が発表されました。しかも、再オープンの日付も先送りになっています。さらに驚くべき内容が、下記記事にあります。

LINK JR東、鉄道博物館の増築計画縮小 建設費高騰で  :日本経済新聞

鉄道博物館のリニューアル縮小、延期の裏には日本における「建設費の高騰」が原因とされており、規模を縮小し延期をしたにもかかわらず、総工費がさらに膨らむという、(多分建設業界の方以外には)衝撃的な報道でした。

おそらく、オリエンタルランドの拡張計画(2014年4月発表→2015年12月延期発表)もまったく同じ悩みを持っていると推測します。つまり、オリエンタルランドは拡張をしたくても、「当初発表の拡張を行うには予算が足りない」のではないかと私は考えます。

裏付けになるような資料を探してみました。まずは普通に雑誌記事を。

LINK 工事費高騰でピンチ!マンション大規模修繕の深刻|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン

こちらはダイヤモンド・オンラインの記事。一般的なマンションにおいて、修繕費が増加しているという記事です。一部引用します。

原因は全国的な工事費高騰だ。東日本大震災の復興需要をきっかけに、長年低水準で推移していた全国の工事需要は増加に転じ、そこにアベノミクスによる景気回復、さらには東京五輪の開催準備などが加わったために、「2013年春を基準にすると、工事費は今、3割くらいは値上がっています」(さくら事務所の土屋氏)。

そしてこちらは、横浜市総務局の資料。新市庁舎整備に係る事業手法・スケジュール関連の発表資料です。

LINK 横浜市総務局 要求資料

こちらの資料番号27番に、下記の数値が出ています。

1 最近の建設費高騰状況
2 新庁舎建設において予想される建設費、資材高騰への対処方法

これを見ると、人件費、材料費ともに目に見えて値が上がっているのが分かります。鉄筋は2年前の20%増であったり、人件費も12%~23%の増加という、急激な価格上昇がデータで分かるようになっています。

そして国土交通省のデータも。大まかな流れは一緒です。

LINK 総合政策:建設工事費デフレーター – 国土交通省

特に舞浜の建物は、普通の建物とはかなり異なる特殊なもの。そうなると工賃も大きく変わってくるのは想像に難くありません。そうなると、当初発表されていたアートのようなものを造るには、5000億の2~3割増し……つまり1500億程度の上積みという予算を作れるかというと、さすがにオリエンタルランドでも無理でしょう。

そうなると、一度は公開した規模を破棄し、「規模は小さい」内容の案をもう一度考える必要が出てくるのではないかと思います。

まとめると、今回の「5000億拡張」は大変時期が悪く、次に出てくるであろう案は当初の内容とはかなり異なるものになる可能性が非常に高いわけです。しかしそれはオリエンタルランドのせいでも米ディズニーのせいでもなく、単に外的要因が大きく動きすぎたから、ということなのではないでしょうか。

次に出てくる施策はおそらく、小回りの効いた「オリエンタルランドの工夫」を生かしたものになるはず

とはいえ、あゆみを止められないのが現在の東京ディズニーリゾートが置かれた状況です。真っ先に止まると思われていたグランドサーキット・レースウェイがいまも動いていること、イッツ・ア・スモールワールドも動き続けていることから、現状のままいかに満足度を高めるかという策が、本来の拡張とは別に動いているのではないかとも想像しています。さすがに今のままではまずいでしょうからね。

いったいそれが何であるかについてはヒントが少なすぎて書けません。しかし、これを読んだらほんのちょっとでも、この5000億投資の話が進まないことに対していらだちではなく、ああ、なるほどそういうことなら……と思っていただければと思います。正直鉄道博物館のような話、東京ディズニーリゾートに限らず今後いっぱい出てくるんじゃないかな……。