「デアデビル」「ジェシカ・ジョーンズ」を見たぜ!——Netflixで展開するもう1つのマーベル・シネマティック・ユニバース

忘れていたワケではありませんよ!

キャプテン・アメリカシリーズ最新作「シビル・ウォー」予告も公開され、今まさにマーベル映画で共通の世界観「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)に注目が集まっているところでしょう。しかし、映画「アベンジャーズ」(1)のニューヨーク決戦が行われた結果、変わってしまった日常のなかに多くの歪みが生まれたことをご存知でしょうか。

その一端は、abcによるテレビシリーズ「エージェント・オブ・シールド」でも語られていました。これはアベンジャーズにおけるニューヨーク決戦の前に、ロキの凶刃に倒れたエージェント、フィル・コールソンによる物語。彼はなぜ死ななかったのかを含め、MCUにおけるシールドの「人間側」に焦点を合わせたドラマです。現在、日本でも第2シーズンまで見ることができ、アメリカでは第3シーズンが放送されているところです。

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そしてもう1つ、注目すべきシリーズがスタートしています。ネット配信サービスのNetflixオリジナルストーリーとして配信されている「デアデビル」「ジェシカ・ジョーンズ」です。

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このシリーズは2014年2月に発表があり、ニューヨークを舞台に複数のドラマシリーズを撮影するというプロジェクト。主人公は「デアデビル」「ジェシカ・ジョーンズ」「ルーク・ケイジ」「アイアン・フィスト」で、最終的にこれらのヒーロー/ヒロインが終結し、「ディフェンダーズ」を作る、というところまで決定しています。実際はデアデビルの第2期も決定しており、さらに構想が広がる予感がします。

では、現在配信が行われている2作品を紹介しましょう。

盲目の弁護士が闇を斬る――「デアデビル」

Marvel デアデビル | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
幼くして視力を失ったマット・マードック。昼は弁護士として、夜はスーパーヒーロー、デアデビルとして、ニューヨークの一角で悪との孤独な戦いを続ける。

まず、Netflix日本上陸時に大きな話題になった「デアデビル」。子供のころの事故により全盲となったマット・マードックが、昼は弁護士として、夜はヒーローとして活躍するコミックスをもとにした作品。

Netflix版「デアデビル」では、実はMCUと大きなクロスオーバーをしています。舞台はニューヨークの「ヘルズ・キッチン」と呼ばれるエリア。実はここは、アベンジャーズのニューヨーク決戦において大きな被害を出した場所で、その結果、治安の悪くなった同地区は再開発のあおりを受け、さまざまな組織が暗躍するようになりました。要するに「地上げ」などの利権を狙い、マフィアだけでなく、ロシアのギャング、日本のヤクザ、中国の麻薬商人がそれぞれの利を得るために、協力したり反目したりするという状況。このストーリーは、アベンジャーズの決戦なしには語れないのです。

そしてデアデビルにおいて最も特徴的なのは、これまでのMCUでは見られない心理描写。特に、本作のヴィランズにおける描き方はMCUでもナンバーワンといわざるを得ません。ストーリーの序盤で明らかになるそのヴィランズの姿には驚く人もいるかもしれません。登場当初から、主人公を差し置き感情移入できるほどのキャラクターとして描かれています。ジュラシック・ワールドでも登場したヴィンセント・ドノフリオの演技がとても素晴らしい。そしてウェスリー。イケスーツのウェスリー。

本作におけるヴィランズの描き方は、ディズニー映画「ノートルダムの鐘」のフロロー判事を思い出します。本作では、ヒーローであるデアデビル=マット・マードックと、ヴィランズの思いは実はまったく一緒で、その手段だけが異なるのです。それぞれが考える正義がぶつかり合う。それだけに、ヴィランズが本当に悪なのかすらも分からないという素晴らしい描き方をしているのが本作です。

今回の第1シーズンは、デアデビルおよびヴィランズ(作中の展開を考え、あえて名前は伏す)の見事な「オリジンストーリー」になりました。これさえ見ればNetflixとマーベルの本気度が分かるはず。

嫌悪感を覚えるほどのヴィランズとどう決着を付けるのか――「ジェシカ・ジョーンズ」

Marvel ジェシカ・ジョーンズ | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト
この街で、もう犠牲者を出したくない―。心に傷を抱えた孤独な探偵、ジェシカ・ジョーンズが、彼女の人生を破壊したその男を、特殊能力を使い追いつめる。

2015年11月には、NetflixのMCUドラマ第2弾が全話配信されました。「ジェシカ・ジョーンズ」もデアデビル同様、ニューヨークを舞台にした作品で、珍しくヒロインが主人公です。とはいえこのジェシカ・ジョーンズ、途中まではスーパーパワーを持っているかどうかもはっきり描かれませんし、とにかく精神不安定でPTSDが強調されます。その原因は、本作のヴィランズ、キルグレイブによる精神攻撃。デアデビルでは残酷表現で目をそらすことが多数でしたが、今作においては「気持ち悪っ!!!」「怖っ!!!!!」という意味で目をそらすシーンがすごく多い作品。ヴィランズの能力があまりにもチートであり、そりゃPTSDにもなるよ!と思えます。言うなればこのヴィランズは、私利私欲だけに走ったジョーカー(バットマン/ダークナイト)のような狂気です。なんとなくNetflix版MCUは、ダークナイトシリーズを彷彿とさせるんですよね。

そして、最注目すべきストーリーが1つ。あるエピソードにおいて、ニューヨーク決戦における一般市民の被害が明らかになります。その結果、一般市民の中にはスーパーパワーを持った人間が暴れることで傷つくのはいつも私たちだ!という感情を持っている人もいる、という描写があるのです。この内容をこのタイミングで入れ込むのは、もちろん「シビル・ウォー」が関係しているでしょう。

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この作品のもう1つの特長は、かなり踏み込んだクロスオーバー。第1話から次回作とされる「ルーク・ケイジ」の主人公、ルーク・ケイジがバーテンダーとして登場し、ジェシカ・ジョーンズと濃密な関係を結びます。さらには上記「デアデビル」ともクロスオーバーしますので、順番としては放映順に見るといいでしょう。

そして面白いのは、ストーリーが完結しても謎が残りまくっていること。デアデビルでは謎の言葉が宙に浮かんだままですし、ジェシカ・ジョーンズもあからさまにある登場人物のその後がぷっつりと途切れています(気になる人はNukeで検索だ)。アメリカのドラマは不人気になるとプロジェクトが終わってしまい、この手の謎が本当に中ぶらりんのママということもありますので、Netflix版はきれいな終わり方をしてくれないと困るなあ、と思いました。なんだよ「●●●」(アルファベット三文字)って!!!(と言いつつ下記を予想)

マーベル・シネマティック・ユニバースが覚悟完了した証しも描かれている

そのルーク・ケイジは別名「パワーマン」としてコミックスに登場した怪力を持つ男。ディスク・ウォーズ:アベンジャーズにも登場していたので見ていた方ならあの脳筋か、と分かるはず。で、問題はなぜこんなに「スーパーパワー」持ちが一箇所に登場しているのか、というところ。私はここに、MCUのある決断を見ました。

そもそものきっかけは、「キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー」のスタッフロール後の映像。もうネタばれも何もないと思いますので書きますが、ここではエイジ・オブ・ウルトロンに登場した双子「クイックシルバー」と「スカーレット・ウィッチ」が登場します。このふたりはそもそも「X-Men」シリーズにおける、マグニートーの息子、娘としてコミックスでは展開していましたが、MCUにおいてはロキの杖の力(マインドストーン。現在はヴィジョンが所有)により強制的に発現された能力、という設定でした。

そしてエージェント・オブ・シールド。このドラマの中では、アベンジャーズ“以外”のスーパーパワーの存在が何人も登場します。それは事故で得た力だったり、強制的に作られた力だったり。一応シールドはそういう人間をリスト化し、管理するという目的も持っているのですが、MCUにおいてはこのようなスーパーパワーが、ハルクやキャプテン・アメリカ以外にも存在する、という状況を前提としています。

問題はその力の内容。炎を出す力とか氷を操る力とか、目が見えなくても音や匂い、触覚でまるで見える化のように行動できる力とか、怪力、強じんな肉体、人を操る力……これ、基本的には本来「X-Men」で語られる「ミュータント」が担当していたものなんですよね(ただし、ミュータントは先天的なパワーを表す)。

実はこの転換には、マーベル・シネマティック・ユニバースなりの落としどころがあると私は考えています。それはエージェント・オブ・シールド第2期、第3期の展開で明らかになるものなのですが、おそらくこれらドラマの登場人物たちはMCU第3期において山場のストーリーとなる、インフィニティ・ストーンをめぐりサノスとアベンジャーズが対決する「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー」にはつながらないと見ます。そうじゃなくて、ドラマ版のMCU――エージェント・オブ・シールドシリーズ、Netflixのディフェンダーズ――は、MCU第3期のもう1つの山場「インヒューマンズ」(2019年7月12日公開予定)、および現時点ではタイトル未発表の3作品につながるはず。インヒューマンズこそ、MCUにおいては大人の事情で出演させることができないX-Menの補完なのでしょう。

ともあれ、次はムキムキのナイスガイ、「ルーク・ケイジ」のストーリーが楽しみです。目立ちまくるスーパーヒーローではなく、さまざまな事情で力を持ってしまった一般人たちのストーリー。これまでのMCUとはまた違った魅力があるので、ぜひチェックを。