「レリゴー飽きた」は甘え――ディズニーランドのエンターテイメントにおける表現の工夫を見よ

注:タイトルは釣り。これはジョークエントリーです。真に受けないように。

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「Let It Go」という楽曲があります。この曲は映画「アナと雪の女王」(Frozen)で使われた、ロペス夫妻による計算し尽くされたディズニー楽曲。まずは上記の劇中内での使い方を見てください。ピアノによる静かなイントロから、エルサが過去を振り切って女王へ変身する様子がドラマティックに描かれています。原曲はイディナ・メンゼルがイディナ・メンゼルテイストを完全に出し切り話題になり、日本においては松たか子が熱唱、日本語でも原曲にまけないパフォーマンスを披露しました。

その結果、「アナと雪の女王」は日本でも超、超大ヒットを記録し、特にそのストーリー内でも重要な「Let It Go」は老若男女問わず誰もが一度は聞いたことのあるディズニー楽曲になったのはご存じのことでしょう。

2013年末に映画化公開された後、やはりこの楽曲は映画の枠を超えて浸透をします。特に印象深いのは、子どもたちがこの曲をどう見ていたか。YouTubeに広がった動画をマッシュアップしたこのクリップを見ると、劇中内でとても印象的なエルサの行動――過去の象徴、手袋を風に投げる、足を力強く踏み出す、ティアラを捨てる、など――を子どもたちがしっかり見ていて、そっくりまねる姿がとてもほほえましいです。

21 Mini Elsas Star In An Epic Supercut Of 'Let It Go'

映画のフィーバーが一段落しようとしたとき、ディズニーは短編「Frozen Fever」を発表。このグッズも登場することでさらなるフィーバーを呼び起こし、現在では発表されているだけでも、アトラクション化、ブロードウェイの舞台化、そして続編の正式発表までも行われており、大ヒットしたこのコンテンツを、ディズニーがいかに大事にしているかが分かるかと思います。

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テーマパークにおける「Frozen」フィーバー

さて、テーマパークに目を向けましょう。テーマパークにおいてもFrozenは収穫期に入っており、コンテンツの活用事例が多く目立つようになります。イマジニアによるパーク展開は映画のヒットから若干のタイムラグがあるのが普通ですが、Frozenについてはかなりのハイペースで導入が進みます。

みんなだいすきアナエルサさん

みんなだいすきアナエルサさん

まずは当然ながら「アナとエルサのグリーティング」。これはある意味、役者を作ればすぐにできる手法で、すでに全世界のパークで実施され、大変な人気を誇っています。残念ながら東京ディズニーリゾートにおいては登場は果たしたものの、単純なグリーティングができないほどのフィーバーと判断されたのか、単体のグリーティングは果たせていません。その代わり、世界でも例を見ない「Frozenのエリア化」を果たしているので、日本においてもヒットの結果が重視されていることは間違いないでしょう。

そしていま、グリーティングを超えたエンターテイメント部分でも、Frozenの波がやってきています。ちょうどそのタイミングがディズニーランド60周年「Diamond Celebration」の新規エンターテイメントスタートに重なり、ちょっと面白い事象が起きています。

そう、パーク内の至る所が「レリゴー」になったのです。

レリゴー飽きたのその前に

現在ディズニーランド・リゾートで開催されている各エンターテイメントで、これだけのレリゴーが聞けます。

  • Disneyland Forever
  • Paint the Night
  • World of Color: Celebrate!
  • For the First Time in Forever: A Frozen Sing-Along Celebration
  • Frozen at The Royal Theatre

で、いまディズニーランド・リゾートに行くという方は、特に最初の3つのエンターテイメントは絶対に見逃さない、と構えているはず。そこで同じ曲が流れてしまうと「飽きた」というのはもう仕方がないことでしょう。しかし、そこをもう一歩踏み込むと、なかなか面白い考察ができます。

もはや、パークにおける「レリゴー」は、イマジニアに課せられた“課題演技”なのです。エンターテイメントを作り出すものたちに課せられた「レリゴー」という題材を、持てる表現力と演技力、技術力でどう表現するかという課題をこなした結果が見られる、そう考えるべきでしょう。ディズニーはFrozenコンテンツを末永くキラキラ輝くものにしたいので、この曲を絶やすことはできません。その使命を元に、エンターテイメントにどうなじませるか。それが、この曲がなぜ存在するかという理由です。

では、ディズニーランド・リゾートにおける課題演技「レリゴー」、それぞれの表現を見ていきましょう。

Disneyland Forever:炎と花火による「派手さ」を求めたレリゴー

Disneyland Forever Main Street U.S.A/As to Disney photos, logos, properties: (c)Disney

Disneyland Forever Main Street U.S.A/As to Disney photos, logos, properties: (c)Disney

最初はパークワイドのエンターテイメント。この曲はご存じのように氷の冷たさや白色をイメージする曲ですので、本来花火とは相性が悪い演技です。そこを、楽曲のクライマックスの派手さで力押しする――そんな狙いが見える演技でした。

全ての演目において、すでにあのピアノのイントロが入っただけである種の「あきらめ」がゲスト側に出てくることは否めません。またか、と。特にこのDisneyland Foreverにおいては、逆にこのあきらめを武器に、最初のハードルを低くしたことでクライマックス部分の盛り上がりを演出しているように見えます。なので、この演技は「えーまたレリゴーかよ」と思いながらも、後半の盛り上がり、そして決めセリフである「The Cold never bothered me anyway」の盛り上がり部分では「やっぱレリゴーすごいわ」と思っているはずです。これはもう、脱帽のレリゴーといわざるを得ません。ロペス夫妻はここまで計算してこの曲を作っているのか!と。知らんけど。

よってDisneyland Foreverにおけるレリゴーは「力のレリゴー」であると断言します。

World of Color: Celebrate!:最も有利なフィールドで表現するレリゴー

World of Color: Celebrate!

World of Color: Celebrate!

氷と白をイメージするこの楽曲において、最も有利なフィールドはこのWorld of Colorです。水とスポットライトを多用し、白をベースとした表現ができるこの場所における課題演技は王道オブ王道。しかも映像も利用でき、原作に最も近いレリゴーを安心して見ることができます。

こちらもほぼフルコーラスに近い楽曲を使っており、横に長いフィールドを活用、冒頭のレリゴー部分で特に子どもが大好きなあの指先からの魔法が再現できており、この部分で「いつものピアノでまたかよと思った子どもがもうレリゴーを口ずさんでいる」という光景が見られることでしょう。子どもが反応したのなら、その課題演技は8割完成したも同然です。

よってWorld of Color:Celebrate!におけるレリゴーは「王道のレリゴー」と言えるでしょう。

Paint the Night:光のレリゴーはアナとエルサの力を借りて

Paint the Nightのアナエルサ

Paint the Nightのアナエルサ

もう一つの新たなエンターテイメントは、ショーではなくパレード。それも最新技術を使った、光を基調にしたパレードにおけるレリゴーです。

このパレードにおけるレリゴーでのポイントはやはり、アナとエルサの力を借りられるということでしょう。エルサが生で歌う(演技をする)レリゴー。これは大変力強いです。
そしてパレードにおいては、楽曲のどこから聞こえるかはゲストの場所によるため、そのスタートを演出側が設定できません。ショーであればあのピアノから入り、ドア閉めドーンまで全員に同じ内容を聞かせられます。が、パレードはそうはいきません。そのため、パレードにおいては楽曲を編曲し「どの位置に座っていても一番聞かせたい部分を組み込める短いループにせざるを得ない」わけです。ここに、パレードにおける課題演技の難しさがあります。

しかもパレードの場合、同じフロートにオラフも乗っており、彼の「In Summer」も聞かせなくてはなりません。これをきっちりクリアし、エルサによるレリゴーが聞ければ、ゲスト側の満足度はバッチリでしょう。このパレードにおいては限られたリソースを使い切って、レリゴーの一番いいところが体験できるはず。

よってPaint the Nightにおけるレリゴーは「技のレリゴー」と言えるでしょう。

For the First Time in Forever:体験を伴うレリゴーのすごさ

For the First Time in Forever: A Frozen Sing-Along Celebrationのエルサさん。手から魔法が!

For the First Time in Forever: A Frozen Sing-Along Celebrationのエルサさん。手から魔法が!

For the First Time in Forever: A Frozen Sing-Along Celebrationは他のエンターテイメントにはない強みがあります。それは「体験を伴うレリゴー」。タイトルの通り、ゲストがFrozen楽曲を一緒に歌うということを前面に出した課題演技です。

これについては、あの国民曲をディズニーランド・リゾート内で歌える、それも、アナやエルサとともにという点が大変に強い内容。歌えるだけでも有利であるのに、ショーとしても大変クオリティが高く、元マペット・シアターである会場の設備(舞台以外にも映像を映写できる!)をフル活用し、有利であることにあぐらをかくわけでもなく全力でこのレリゴーに取り組む姿は大変素晴らしいものでした。

そしてやはり、自らが口ずさむことでこのレリゴーの魅力を体感できるという点は、ディズニー、そしてロペス夫妻の狙いを考えると逆に恐ろしさすら感じます。そうです。レリゴーとは親しみやすさを感じられるほどに優しく近づいてきますが、知れば知るほど恐ろしさを感じる楽曲なのです。この会場で聞くレリゴーがどう感じられるか、それはもはやこの楽曲やディズニーに対するリトマス試験紙でもあるのです。

よってFor the First Time in Forever: A Frozen Sing-Along Celebrationにおけるレリゴーは「自らをのぞき込むレリゴー」と言えるでしょう。

Frozen at The Royal Theatre:出した答えは「レリゴーの変化球」

Frozen at The Royal Theatreのショー。真ん中はハンス。

Frozen at The Royal Theatreのショー。真ん中はハンス。

最後に、おそらく一番予算も場所も限られた「レリゴー」を追究したエンターテイメントを紹介します。Fantasy Faireで開催されているこのミニショーは、語り部2名、アシスタント的な演者数名、そしてアナ、エルサでコミカルな「Frozen」を再現するという、どちらかというと子供向けのエンターテイメントです。

ここではレリゴーが「フック」として使われていることにまず驚きます。ほぼ基本的には作中のストーリーに沿って話が進むのですが、なんとレリゴーを「歌わない」という演出がなされています。当然、ストーリーを熟知した子どもたちはレリゴーを歌う気満々なのですが、そこで肩すかしを食らうのです。これには本当に驚きました。レリゴーをレリゴーしない、そんなものもあるのか!

しかし、そのフラストレーションがきっちりとエンディングで昇華するのが素晴らしいところ。ストーリーが大団円を迎え、最後に盛り上げるのが「レリゴー」。小さなステージ、限られた演者数をものともしないほどの盛り上がりは、工夫とともにレリゴーをいったん封印することによる喜び、うれしさ、この世にレリゴーがあって良かった、という感動すらも覚える構成です。

よってFrozen at The Royal Theatreにおけるレリゴーは「感謝のレリゴー」であると言えるでしょう。

ここでもレリゴー:Animation AcademyのLet It Goもなかなか。曲は1番、映像は2番でシンクロさせてて超驚いた。

ここでもレリゴー:Animation AcademyのLet It Goもなかなか。曲は1番、映像は2番でシンクロさせてて超驚いた。

ここでもレリゴー:Storybook Land Canal Boats

ここでもレリゴー:Storybook Land Canal Boats

レリゴーを聞いたら、イマジニアの意図を思え

このように、同じピアノイントロのあのレリゴーであっても、その表現手法はさまざまで、似たような表現にならぬようイマジニアたちが血涙流しながら対応していることが分かるのではないでしょうか。こんな苦労を考えたら「レリゴー飽きたわーオレが世界で一番最初に飽きたわー」なんて言えないはずです。多分。

LINK:惚れさせ355 「飽き」 : 地獄のミサワの「女に惚れさす名言集」
惚れさせ355 「飽き」 : 地獄のミサワの「女に惚れさす名言集」

ぜひ皆さまもこれを機会に、例えばワンス・アポン・ア・タイム ~スペシャルウィンターエディション~におけるレリゴーが、いったい何を狙ったレリゴーだったのかを考えてみてはいかがでしょうか。いまのところ、どのバージョンのパークレリゴーにおいても、レリゴーの役割をレリゴーできていると考えています。無駄なレリゴーなど、パーク内には一つもない――そう考えられれば、あなたも立派なレリゴーです。

というかディズニーマニアであれば、「あれ?クライマックス部分の盛り上がりまくってます!的映像に、これまで出てきた映像をコラージュ風に使い回しすぎていてなんだか全部おなじショーに見えるよ」でおなじみ、“スティーブ・デイヴィソン症候群”のほうがよっぽど問題提起すべき部分です。って舞浜狂のさくまさんが言ってました。同感。

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Steve Davison Fan Page