ディズニーがマーベルから得たものとは? 一切ネタばれのない「ベイマックス」評

まだ公開まで2カ月もあるので、現時点では一切のネタばれが許容できない前提での記事を残しておきます。書いてもいい範囲は「予告で論じられているもの」だけとしますので、それすらもネタばれがいやだ、という方は、12月にまたお会いしましょう。


.2014年10月23日、日本およびアジアでの最速公開となる「ベイマックス」上映が東京国際映画祭にて行われました。当日はヒロの兄、タダシの声を当てた小泉孝太郎さん、そして叔母のキャス役菅野美穂さん、そして監督のドン・ホール&クリス・ウィリアムズ、さらに製作総指揮のジョン・ラセターも登場するという布陣。

さて、この映画ですが、日本のプロモーションでは触れられていない点として「マーベル原作」という要素があります。初めてこの原作である「Big Hero 6」の名前が出てきたのは2012年の7月。当初はまさかディズニー長編アニメ枠としての作品だとは思っていませんでした。正式発表があったのは2013年5月。その発表直後に原作を手に入れて読んでいました。

結論としては、この原作とディズニー版「Big Hero 6」はほとんど無関係の作品といっていいでしょう。逆に、この原作から拾い上げたもの、それこそがいまディズニーの注目するポイントなのだろうと思っています。

ディズニー長編映画に足りなかったもの、それは

ディズニー長編作品をプロモーション的な立場から見ると、圧倒的な「男の子要素不足」があります。例えば「シュガー・ラッシュ」。この映画の原題はごぞんじのように「Wreck-It Ralph」でした。当初は「ひどい邦題を付けやがって!」と憤っていた私も、実際に映画を見てみると、むしろこれ本来の原題がSuger Rushだったんじゃないの?と思うような、王道路線のディズニー映画。それはつまり、ゲーム「シュガーラッシュ」を舞台にした、ある意味「ヴァネロペ」の物語であり、実は女の子要素の方が強い映画だったと思います。それを、プロモーション的な意味で男の子向けである「ゲーム」を強く推したのではないかと推察できるわけです(これはこれですごかったけど)。

この傾向は今に始まったものではありません。そもそも、ディズニー長編映画とは「女の子」向けという傾向のあるストーリーが多いのです。いわゆる「プリンセスもの」ですね。その頂点としてはやはりプリンセスストーリーの王道である「シンデレラ」であり、その前提を超え、行動するプリンセスの源流となった「リトル・マーメイド」であり、新世代のプリンセスストーリーを作り出した、もはやプリンス不要の「アナと雪の女王」であるわけです。ここには、「男の子向け要素」はほぼありません。

とはいえ、ディズニー長編で男の子向け要素がゼロだったわけではありません。過去の作品では、第39作目「ダイナソー」、43作目「トレジャー・プラネット」などは直球で男の子狙いだったのでしょう。その結果は皆まで言うな。言わなくていい。

ディズニー作品で男の子向けといえば、長編アニメではなく、実写作品がその役割を担っていました。例えば「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズでした。長編アニメで「男の子をつかむ」ことの難しさは、これまでの歴史が示しているのではないかと私は考えています。

そして2009年、強力なコンテンツがディズニーの枠内に入ってきます。それが「マーベル」です。ディズニーと同じく「良質のストーリー」を追究し、数え切れないほどのキャラクターを持つ、男の子を対象とした集団です。マーベルの登場が、まさかここまで大きなことになるとは、ディズニーマニア側の私には想像が全く付きませんでした。

マーベルのストーリーを換骨奪胎し、「ディズニー映画」とする手腕

マーベルといえば、ディズニー以前にもパラマウント映画配給で「アイアンマン」「キャプテン・アメリカ」「マイティ・ソー」などを作り出し、その後ディズニー配給として「アベンジャーズ」が超、超大ヒット、現在も「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」でメガヒットしています。日本でも当初の想像をはるかに超えた浸透具合で、一部のマニアが喜んでいたというレベルが「いつのまにか女性ファンが大量に」という状況。

マーベルストーリーの真骨頂はやはり「正義は必ず勝つ」「信じているヒーローが活躍する」でしょう。ダークナイトシリーズにあるような「苦悩するヒーロー像」という面も徐々に入りつつも、やはり見ていて「スカッとする」「アガる」というのは、永遠の男の子たちを魅了する要素だと思っています(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーはまさに大人も子どもも楽しめるという点で最強)。

そのような「マーベルストーリーの要素」。ディズニー・スタジオのメンバーも見逃すはずがありません。今回、ベイマックス/Big Hero 6という作品には、これまでディズニーアニメが持っていたスピリットを維持しつつ、マーベルストーリーの要素も融合、間違いなく「男の子要素」に訴えかける作品に仕上がっているのが超重要ポイントです。いままでできなかったことが、マーベルが仲間入りしたことで1つの作品として、大変完成度の高いレベルで実現したというのが何よりもうれしいことです。

難しいことはさておき。もうちょっと先の予定ではありますが、12月20日の公開を楽しみにしていてください。アナと雪の女王でもの足りないと思っていた永遠の男の子たち、そしてディズニーアニメが好きな人たち、そして何より、マーベルがディズニーなんかに買収されて大丈夫なの?とおもっていたマーベルファンにこそ、この「ディズニーアニメ」を見てほしいと思います。

ディズニーの黄金期を体感できてうれしいなあ、と思える作品でした。

https://www.youtube.com/watch?v=8Bwy5SMETwU

余談:

邦題は問題なしですし、話題のAI「Story」英語版も全く違和感なし。上記観点から、「泣ける」側に振りきった日本のプロモーションについてもまったく問題なしです。まずは映画館に来ていただかないことには何も始まりません。

吹き替えは見ていないので分かりません。私が惜しいと思ったのはある1点のみ。それはまた、本公開後にでも。

追記:2014年12月17日

ネタばれ含む内容をこちらに。ここに来て日本独自の「コミックス版」が重要なピースになりました。