追記:
配信の再開が発表されました。
ーー
アップルとディズニーということで、各種メディアで大変大きな扱いとなっているようです。
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンは2014年7月9日、同社の映画ソフトにおいてiTunesでのオンデマンド配信を停止すると発表しました。iTunes以外でのオンデマンド配信は行われています。
しかし残念ながら、iTunes社と今後のオンデマンド販売サービスについて最終合意に達することができず、ディズニー関連作品の販売継続に至ることができませんでした。そのため、2014年7月8日を持ちまして、日本市場におけるiTunesを通じてのディズニー関連作品のオンデマンド販売を見合わせることとなりました。
このタイミングは、まさに「アナと雪の女王」オンデマンド先行配信であるため、双方かなりギリギリの折衝が行われていたと想像します。本記事では、この背景についても紹介してきます。
まず、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン側のおはなし。WDSJは2013年11月に、日本独自の「MovieNEX」というパッケージを発表しました。この仕組みはDVD/Blu-rayという物理的メディアだけでなく、オンデマンドやサービスも含んだ1パッケージにするというものでした。
この発表時、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンの塚越ジェネラルマネージャーにインタビューする機会があったのですが、実はこの取り組みは米本社よりも進んでおり、当時「Disney Studio All Access」や「Digital Copy Plus」を進めながらも浸透しなかった状況を、MovieNEXはある意味打開したというものでした。このときにもiTunesでの取り扱いはありませんでした(ニコニコ動画のドワンゴ、およびGoogle Playと手を組んでいる)。
そして2014年2月、満を持して米ディズニーが「Disney Movies Anywhere」をスタートさせます。これはデジタルダウンロード/ストリーミングを中心とした管理システムで、パッケージとしてBlu-rayを購入すると付いてくるデジタルダウンロード権を、ディズニーが運営する1つのサイトで管理するというもの。
このサービスの特徴として、これまでiTunes Storeで購入済みのディズニー作品(ピクサー、マーベル含む)もその管理の対象とでき、iTunesアカウントをリンクさせることで、Disney Movies Anywhereのサイトでストリーミング試聴できるようになります。アップルは独自に「iTunes in the Cloud」というクラウド配信の仕組みを持っていますが、ディズニーはそれを自前で用意した、ということになります。
ここまで読んでいただけると、今回の日本におけるウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンとiTunes社(日本においては著作権管理のさまざまな問題により、アップルではなくiTunes社が運営しています)との関係と、アメリカにおけるウォルト・ディズニー・スタジオとアップルの関係が異なる点に気付くはずです。アメリカでは蜜月なのに、なぜ日本で?と思うはずです。
いまのところ双方からコメントらしいコメントが出ていないのですが、大ヒットコンテンツである「アナと雪の女王」を持っていること、その折衝でうまく合意が得られなかった……ということを考えると、今回の折衝はひょっとしたら「ディズニー有利」に動いていたのではないかとも思います。仕組みだけに言及すると、配信サイトを選べる、Androidにも対応しているということでMovieNEXのほうが機能的に上を行っているので、個人的にはDisney Movies Anywhere統合はあんまりうれしくはないです(ただし、特典を削っているという点でMovieNEXには失望はしています)。このオンデマンド販売停止が再開するかどうか、その再開後になにが動くか…というのは注目に値しますね。
#とはいえ、単にオンデマンドで見たいというのならば、1つの購入で吹き替え/字幕を選択できるような他のサービスのほうが便利なんじゃないかなーとも思いますが……。