ディズニーファンはどう思ったか——「エスケイプ・フロム・トゥモロー」を見たぜ!

2013年1月にサンダンス映画祭で上映され、制作時から「ウォルト・ディズニー・ワールド内を無許可で撮影した」という点で話題になった作品、「エスケイプ・フロム・トゥモロー」(Escape from Tomorrow)が、日本においても2014年7月19日に公開されます。試写会に呼んでいただき、一足先に拝見してまいりました。

エスケイプ・フロム・トゥモロー

エスケイプ・フロム・トゥモロー

日本においては「問題作」「ディズニーに無許可で」「ダーク」的な点を売りにしてプロモーションが行われております。今回は「ディズニーファンの視点で」という評価を期待されて呼ばれたと思っておりますので、そこを中心にいきましょう。そうでない場合、「映画が好きでちょっとでもこの作品に興味があれば見るべし」としか言いようがなく。大多数の映画好きではない方々は、多分アナと雪の女王レベルにヒットしないと映画館に行かないご時世ですからねえ……。

あらすじ

公式サイトから抜粋します。

いろいろダメダメな平均的中年アメリカ人のジムは二児のパパ。この途方もない未来からの脱出ゲームは、ある朝ジムが突然会社をクビになったときから始まっていた。なにかにつけて口うるさい妻と、言うことを聞かない子供たちを連れて、魔法の城や妖精たち、ホワイト・プリンセスの待つあのステキなテーマパークへやってきたジム。夢と魔法の国での現実逃避を企てるジムがそこで目にするものは、黒いプリンセスが仕掛けるゆがんだ幻想ワールド。楽しいはずの家族旅行はたちまちにして、妄想と奇妙な出来事に溢れたシュールな悪夢へと変貌する…。夢が必ず叶うこの場所は、ジムの偉大なる妄想までをも叶えてしまうのだが…。

映画としてのデキと、ディズニーファン視点でのツッコミと

真っ先に浮かんだ感想は、「あーサンダンスっぽい」でした。なんだろう、昔で言うところのPFFアワード(…って今もあるのか!)で、新進気鋭の監督が実験作を作ったら受賞、ぴあだけがイチオシ!という感覚、分かりませんよね…自分でもなんとなくしか分からなくて、その結果が「サンダンスっぽい」です。

今回のポイントである、ウォルト・ディズニー・ワールドでの無許可撮影については、ディズニーファンとしては最初の10分はのめり込みました。いわゆるお手本に近い公式映像ではなく、高性能なカメラ(実際はキヤノンのデジタル一眼で撮影しているらしい)でモノクロの、いままで見たことのないエリアのライドスルー動画が見られるという点で非常にポイントが高かったです。

特に、この作品ではディズニーのテーマパークで誰もが一度は邪気眼を表す、「ディズニーテーマパークが作り出す、無限の幸福感の“怖さ”」を起点にしたストーリーとしていますので、そのアトラクション/シーンのチョイスは素晴らしかったです。正確には「あ、やっぱりそこは外さないよね」というミスのなさ。具体的には、イッツ・ア・スモールワールドや白雪姫と7人のこびと、そしてくまのプーさんのズオウシーン。さらには魅惑のチキルームでトーテムポールが歌い出す映像に、トム・ソーヤー島の洞窟、ターザンのツリーハウス、そして無機質代表、スペースシップ・アース。この辺のセレクションはマジ完ぺき。

(ここまでの表現で違和感を覚えた人は相当の海外厨であり、多分この映画には向きません)

上記において特によくやった、と思ったのは「白雪姫の七人のこびと」。マジック・キングダムにおいてはご存じの通り、現在既に存在しないアトラクションとなっており、内部の映像は貴重……。確かにこのアトラクションは子どもに対して強いインパクトを与えるもので、映画の導入部分にこの映像が使われたことは、思わず「監督よく分かってる」と思いました。その後、幸せ=大きな不安を与えるイッツ・ア・スモールワールドの映像につながり、主人公が人形たちの表情になぜか幻覚を見てしまう、というシーンが続きます。屋内で家族からひどい言葉を受けた、と感じてしまう主人公が、ボートが屋外部分に出るといつもの家族に戻っている…というのもきれいな演出だなあと。

(え?)

その後、家族はターザンのツリーハウスなどを体験しつつ、これまたふしぎなことが起きるという感じで進みます。

(ん?)

……と、この映画、ウォルト・ディズニー・ワールドのマジック・キングダムやエプコットの土地勘があると、非常に楽しいものになると思います。そのほかにも、ファインディング・ニモのサブマリン・ヴォヤッジ(ん??)の前にあるベンチに座る主人公が、目の前のトゥーンタウン前(???)で遊ぶ子どもを見るシーンなど、現地での位置関係やシーンを理解している人にとっては、「あ、これもう完全に別次元に取り込まれちゃった」と思うこと請け合い。

結論として、海外厨(特にアナハイムもフロリダも知っている、という方)は映画の本筋とまったく関係ないところで大混乱を来しますので、「いんだよ細けえことは」の精神で見るといいと思います。逆に言うと「あ、これアナハイムのあそこだ」「あーまたフロリダ戻ってきた」と、場所当てゲームをするといいでしょう。あと冒頭分かることですが、主人公家族がモノレールが通過するコンテンポラリー・リゾートのいい部屋に泊まっててうらやましかった。

映画としてのデキについては、なんとなく「実験映画」としての意味はあるんじゃないかと思います。そもそもの「夢であふれる世界」への漠然とした不安を映像化する、という試みは使い古されている手ではありますが、それをウォルト・ディズニー・ワールドでやった、ということには一定の評価をせざるを得ません。パンクだしロックです。例えて言うなら、「漂流教室」の最後の方に出てきた、超ディストピアな遊園地。あーいう印象をディズニーパークに持つかも、っていう視点は誰にでもあると思うんですよねえ。

ただ……。実は「ディズニーテーマパーク内で無断で撮影した」映画や作品は山のようにあるんですよね。

例えば、謎のアーティスト、バンクシーがグアンタナモで行われた虐待に抗議して行ったアート活動をひっそりと撮影していた「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」(これ、超名作だから見るといいです)。

この事件は、実際にBBCなどで大きなニュースにもなっています。

そのほかにも、以前お伝えした「Missing in the Mansion」なんかも、パーク内映像で作られた自主製作映画です。

なもんで、パーク内で撮影が即NGというわけでもなく、ある程度グレー領域で残ってるんじゃないかとも思います。

そこで面白いと思ったのは、今回のこの作品は映像は使いまくっているにもかかわらず、音楽はまったく別のもの(しかもよく似ているもの)に差し替えているんです。この辺は、監督がよく分かって作ってるなー、と思いました。主題歌とかすごくよくできてるの(ただし、なぜかメキシコ館ではThree Caballerosをそのまま使ってたw)。きっとこの辺が、危険かどうかの分岐点なんじゃないかなと思いました。

総論としては、やはり「見たいと思ったら見るべし」。ディズニーファンとしては、この映画がディズニーを馬鹿にしているということはまったくなく、それなりにリスペクトを払い、作られていると感じました。

エスケイプ・フロム・トゥモローは、日本では7月19日より公開。上映館が少なめなので、事前に確認をどうぞ。

(すごいどうでもいい話ですが、本家ポスターは4本指なのになぜか日本版は5本に変えてるんですよね。プロモーションでビビってどうする!)

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