「魔法にかけられて」以来の、マニアやっててよかったって思える映画。
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https://www.youtube.com/watch?v=oE9ZBrZ5Ric
試写会にて「ウォルト・ディズニーの約束」(原題:Saving Mr. Banks)を見てきました。ネタバレが極力ないレビューをいれたいと思います。
結論から言うと、「ウォルトのファンにとって、これ以上の宝物はない」です。ウォルトのことを知らない人も、東京ディズニーランドのエントランスであの曲を聴いたことがあるでしょう。ディズニーなんて好きじゃない、という人こそ、劇中の“反ディズニー派”トラヴァース夫人に最大限の思い入れができます。全ての人にお勧めします。
思い入れが強すぎるため、場合分けでライトに書いていきます。
メリー・ポピンズ見てないけど大丈夫?
多分大丈夫です。もちろん、見ておくとより深くこの映画内の出来事を理解できると思います。私もそうだったのですが、メリー・ポピンズを知らなくても曲は聞いたことがあるのではないでしょうか。主に登場する楽曲は東京ディズニーランドのエントランスでも流れていて、そっちの印象が強いかも。つまりメリー・ポピンズの映画版を見てなくても大丈夫です。
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ウォルト・ディズニー知らないけど大丈夫?
多分大丈夫です。こちらも知っておくとベター、というもの。もし今からでも知りたいという方は、さらっと読める「ディズニーランドという聖地」をお勧めします。
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ディズニー好きじゃないんだけど大丈夫?
ウォルトのことをカネの亡者で、愛する自分の作品を奪う人間だと思っているパメラ・トラヴァース夫人が主人公です。思いっきり共感できると思います。
ミッキー好きなだけだけど大丈夫?
オールドミッキーが数シーンで出てきます。しかもすごいホロリとさせる。
ウォルト/シャーマン兄弟/ディズニー音楽が大好きなあなた
余計な質問不要。とにかく見ろ。それだけの価値がある!
宝物のような映画でした。 Photo by mtakeshidpostjp
以下、余談。
この作品に興味があるかたが気になってるのは、おそらく「邦題」と「実話」の2点だと思います。
まず邦題。原題に込められたさまざまな意味を考えると、原題のまま行くのが当然正しいとは思いますが、邦題「ウォルト・ディズニーの約束」も遠くはない、というイメージです。プロモーションを考えるとこれも一つの解だと思います。
もう1つ。実話かどうか。今回のパンフに「メリー・ポピンズ誕生に隠された、感動の実話」とあります。これはまあ……よくはないと思いますが、「実話を基にした作品」「部分的に実話」が正しいと思います。ただ、見ていただければ分かりますが、この点に関して圧倒的な、実に圧倒的な物証が提示されます。これは上手い演出ですね。
この映画については相当な思い入れがあるため、万人に向けたレビューがかけない状態です。2時間ちょいの映画でしたが、ストーリーの本筋ではないところでビクンビクン反応せざるを得ず、ウォルト史を知っていればいるほどたまらない気持ちになる、宝物のような作品でした。映画を見たあとにでも、メリー・ポピンズの製作をしていた1961年ごろまでにウォルトがたどった道のりを知っておくといいでしょう。
ウォルト・ディズニーを調べ、ディズニー音楽と組み合わせていくとかならず知ることになる「2ペンスを鳩に」の逸話があります。ウォルトは毎週末になると音楽家、シャーマン兄弟の2人を自分のオフィスに呼び、この曲を弾かせていたと言います。あの頃のウォルトが、リチャード&ロバート・シャーマンが、そして世界で一番幸せな場所がこの映画の中で描かれています。この圧倒的な絵の前に、上手い言葉が見つかりません。
ウォルト・ディズニーという人がどのようなことを考えて作品を作ってきたのか、いままでは本や「表向きの」映像でしか知ることができませんでした。この作品では生き字引であるリチャード・シャーマンも脚本を確認しており、その点に関してはこの企画がこのタイミングで通って作品として公開されて本当によかった、と思います。パメラ・トラヴァース夫人側のストーリーについては、映画のパンフレットに武蔵野大学非常勤講師の森恵子氏(P.L.トラヴァース研究者)が解説を寄せておりますので、そこをチェックするといいと思います。
メリー・ポピンズができるまでのお話を描きつつ、ウォルト、トラヴァース夫人に共通する問題(誰もが持つ問題)を表現した素晴らしい作品でした。公開されたらまた見に行きます。アナ雪はほっといてもみんな見ると思うので、私はこちらを推しておきたいと思います。