ここではD23 Expo以外のお話を。
Mickey and the Magical Mapにウォルトとディズニーランドを見た
ネタバレ含みます。このショーですが、もともとのあらすじとして「魔法の地図の空白部分を、イェンシッドの弟子、ミッキーが魔法のブラシで塗っていく」ということは聞いていたのですが、これがまさか、まさかの展開。
素晴らしかった!!! Photo by mtakeshidpostjp
クライマックス部分における、イェンシッドとミッキーの会話がキモ。この劇中、空白部分を表す黒い「スポット」とミッキーの追いかけっこの末、ミッキーはスポットをバケツに閉じ込めます。が、ミッキーはスポットが逃げることをふしぎに感じ、「もしかして、この地図は完成されることを望んでないのかも…?」と感じます。その後、イェンシッドが登場し、よくぞこの地図の秘密をみつけたなと、彼を魔法使いの弟子として認めます。イェンシッドがミッキーに気づかせたかったこと、それは「この地図は、イマジネーションがある限り完成しないんだ」。
ここでハッとします。そう、このショーのテーマは、有名なあの言葉だったのです。ディズニーマニアならば聞いたことがあるこのフレーズの「未完成」という部分、それをまさか「スポット」という形でキャラクター化したとは!
Disneyland will never be completed. It will continue to grow as long as there is imagination left in the world. ——Walt Disney
そう見ると非常に深い内容だということが分かります。まず、このMagical Mapというのはディズニーランドそのものであり、登場するシーンは(ひょっとしたら)アドベンチャーランドであり、ファンタジーランドであり、フロンティアランドであり、ニューオーリンズスクウェアなのです。そしてミッキーの師匠、イェンシッドがウォルト・ディズニーそのものであることを再度認識させるような構成になっており、本当に驚きました。
実はこのショーを見るまでは、興味の対象は単に舞台装置がどうなのかとか、運営コスト的にどうなのかとか、東京に持ってこられるかなーとかという点でした。そうしたらこのテーマの深さですよ。ある意味、ウォルトのいたアナハイムの本家ディズニーランドでしかできないものでした。いや、これ、何度振り返っても衝撃的です。
Trader Sam’s Enchanted Tiki Barがすごかった話
Disneyland Hotelに2011年にオープンした、「Trader Sam’s Enchanted Tiki Bar」に行ってきました。ここで言うトレーダー・サムとは、ジャングル・クルーズの最後に登場するあの方。東京版と本家版では若干意味合いが変わってきますが、本家版では取引するグッズを大量に持っており、一番有名なのが干し首でした。
トレーダー・サムで明日の作戦会議。ジャングルクルーズのあのサムのバーです。 Photo by mtakeshidpostjp
トレーダー・サム。本家ジャングル・クルーズ乗ったの初めてだわ…。 Photo by mtakeshidpostjp
このTrader Sam’s Enchanted Tiki Barですが、内装は完全に「魅惑のチキルーム」のイメージ。サムが世界のさまざまな人と交換した貴重なアイテムを展示しているという様相で、取引時に使われたメモや手紙、世界各地のグッズが所狭しと並べられています。
もとになったテーマは、ウォルト・ディズニー・ワールドのダウンタウン・ディズニーに2008年まで存在した「Adventureres Club」。世界の探検家、冒険家たちの秘密結社というテーマで作られたレストランで、同じくさまざまな骨董品やふしぎな住人たちで一種異様な空気をもち、ファンから絶大なる支持を得ていたところでした。実際にこのAdventureres Clubにおかれていた物品そのものを移設して、根底のテーマを共通に持つバーがアナハイムに作られたわけです。
余談ですが、このAdventureres Clubを起点とするものの一つに、Society of Explorers and Adventurers、通称S.E.A.があります。さらにそれは香港ディズニーランドのミスティック・ポイントにつながり、Adventurers Clubのプロップが香港にもおかれています。
雰囲気が素晴らしい! Photo by mtakeshidpostjp
凝ってる… Photo by mtakeshidpostjp
これがホントのファミリーツリー…。リアル家系図だ。 Photo by mtakeshidpostjp
噴火したーーー! Photo by mtakeshidpostjp
店内は写真とアイテムだらけ。屋外にも椅子はあるのですが、絶対に屋内へはいることをお勧めします(ただし、テーブルは10個くらいしかないので大変混雑しています)。店内ではバーカウンターの中は四六時中大騒ぎ。面白いのが、オーダーにあわせてさまざまなアクションがはいること。例えばビール?をオーダーすると、ビールサーバーのレバーを傾けるたびに(本家)魅惑のチキルームのプレショーエリアで流れるあのドラム音が響いたり、カクテルを頼むと店内が大雨になったり火山が噴火したり、ボトル内の船が沈没したりとなんとも落ち着きのない(笑)。
そして、店内の手紙が非常に面白かったです。そもそも額に入れられて飾られているものをよく見るとマーラの目に関する資料があったり(インディ・ジョーンズ)、山の上に難破船が引っかかっていたり(タイフーン・ラグーン)、スキッパーたちの写真があったり(ジャングル・クルーズ)、とにかくこれが世界のディズニーパークに関係するものが多数。それをおうだけでも楽しいです。今回同行者が目を皿のようにしてチェックしたところ、なんとニューヨーク市保存協会(タワー・オブ・テラー)からの手紙を見つけ、私たちが大興奮したということもありました。
WDWのタイフーン・ラグーンだ…。世界のパークがつながる。 Photo by mtakeshidpostjp
トレーダー・サムにニューヨーク市保存協会からの手紙が飾られている。これでジャングルクルーズ、魅惑のチキルーム、アメリカンウォーターフロントがつながった。すごいバーだわ。見つけたのは同行者だったのですが凝ってる。 Photo by mtakeshidpostjp
で、これなぜか写真1枚だけピックアップされてリアルタイムでTwitter上で話題になっていたようですが、正直これをもって「魅惑のチキルームとジャングルクルーズとタワー・オブ・テラーのバックグラウンドストーリーが同一線上に!」という、単純なお話ではないと思っています(そもそも時間軸が全然違う)。実はこの辺のヒントはD23 Expoのセッションにあったようで、参加したhisashi59くんがこんなつぶやきを投げてくれました。
D23EXPOのミスティック・マナーの講演で、キューラインのS.E.A.の写真に関する話が少し出た。
どうやらアトラクションを創った人たちを出したかったみたいだから、
ハリソン・ハイタワー三世としてのジョー・ロードではなく、
ジョー・ロードとしてハイタワー三世を出したようだ。— 久 (@hisashi59) August 15, 2013
だから深く知りたくても、一つの楽屋落ちというかスターシステムだから、それ以上のことはないかもしれない。
— 久 (@hisashi59) August 15, 2013
この「スターシステム」というのはなかなか言い得て妙で、要するにイマジニアもあんまりバックグラウンドストーリーをきっちり考えてこのバーを作ったわけではなく、「もし一つの世界感になったとしたら」的な、もっと簡単にいうと「いんだよ細けえ事は」です。
個人的な感想としては、1つのアトラクションに関するバックグラウンドストーリーは破綻なく作るけれど、こういうごった煮の施設はわりと適当なんだなと思いました。ただそれが香港、ミスティック・ポイントにおけるS.E.A.の時代設定の破綻につながっちゃったのは大変残念ですけれど。(参考:香港ディズニーランドと東京ディズニーシー、そしてダウンタウン・ディズニーをつなぐ「ミスティック・ポイント」のストーリー | dpost.jp)
ともあれ、このバーは「もしかしたら大きな土地を使うアトラクションじゃなくてこれでいいんじゃ?」とまで思うほどの作り込み。ディズニーのイマジニアの底力を見た気がしました。パークだけじゃなくてこういうところに行く時間も確保してみてください。
ツアー「Walk in Walt’s Disneyland Footsteps」を体験してきた話
今回、ディズニーランドにて開催されているツアー、「Walk in Walt’s Disneyland Footsteps」に参加してきました。この名称になってからは初めての参加。
本日のツアーガイド、エリックさん。 Photo by mtakeshidpostjp
このツアーでは、ウォルト・ディズニーがどのようにこのパークを作っていったのか、さまざまな場所を巡りながらガイドしてもらうというもの。ツアーは朝9時ころにツアーブースに集合し、ヘッドセットをつけてまずは眠れる森の美女城からスタート。当然前編英語ですので、ある程度の英語読解力が必要です。
このツアーではいくつかのアトラクションを体験するだけでなく、本家Club 33のドアの中に入ることや、最後にはあの「ウォルトのアパート」を見ることもできます。特にウォルトのアパートはこのツアーに興味があるような方であればたまらない場所。最後の軽食を含め、大体4時間くらいのツアーです。ツアーの最後には、参加者限定の特別ピンのプレゼントも。
ツアー参加者へ配られたピン。 Photo by mtakeshidpostjp
開くとあのセレモニーでの言葉が。 Photo by mtakeshidpostjp
ツアーの内容についてはもう文句なしですが、ツアーガイドのエリックさんが印象的なことをお話ししていたのでそれを紹介します。
このツアーでは、解説以外にもその場所に関連するサウンドトラックを聞かせてくれます。最後の最後、ウォルトのポートレートの前で、あの「2ペンスを鳩に」を流し、そして彼は「ウォルトになろう」といったのです。
「ウォルトになろう。でも、彼のようになるには大変だ。でも、最初の一歩はウォルトですらも本当にちいさなものだった。最初の一歩があったから、こんなすばらしいパークが生まれたのです」
「先ほど聞いたのは、ウォルトが心から愛した曲、シャーマン兄弟の『2ペンスを鳩に』でした。ウォルトは金曜日になるとシャーマン兄弟をオフィスに呼んで、この曲を演奏させたといいます。たった2ペンスでいい、鳩にえさをあげてください——これは、ウォルトが歩んだ、ちょっとした一歩めのことを歌ったのかもしれません。だから、最初は2ペンスでも、ほんのちょっとの歩みでいいんです。それが、この世界をほんのちょっと、よくしていくのです——」
不覚にも、この言葉にはハッとさせられました。「2ペンスを鳩に」というと、ウォルトのファンであればこのエピソードを知らぬ人とはいないでしょう。でも、実は彼の足跡を、最初の一歩を歌った歌なのかも、という視点はありませんでした。おそらく「There’s a Great Big Beautiful Tomorrow」や「One Little Spark」などは分かりやすいウォルトソングだと思います。しかしこの視点はなかった。本当にこのツアーに参加してよかったと思った瞬間でした。余談ですが、いま作った「ウォルトソング」というジャンル、ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーで流れる「Suitcase and a Dream」は近年まれに見る優れたウォルトソングなのでぜひ堪能してください。
D23 Expo 2013についてはこちらをどうぞ。